モーニングピッチ

イノベーショントレンド

 

\イノベーショントレンド解説/

この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。政府は経済安全保障や持続的成長の要となる17の戦略分野に財政資源を集中投下します。こうした国の動きを踏まえ2026年のモーニングピッチでは「日本成長戦略シリーズ」と題し、特集を組んでいます。今回は3月12日に開催したフードテック特集です。

植物工場、陸上養殖、新規食品、食品機械が具体的な検討対象に

長く続くイノベーショントレンド「フードテック」が今回改めて国の戦略分野として取り上げられ、今後、国内でのイノベーションが加速することが期待されます。今回は2025年12月に開催された政府の「第1回フードテックワーキンググループ(WG)」の議論を踏まえながら、その最新動向を解説します。
WGでは、日本の先端技術の粋を集め、世界市場で戦える「勝ち筋」を見極め、攻めの分野として戦略的に投資していく方針が提唱されました。これにより、①新たな市場の獲得・開拓による稼げる農林水産業の創出②技術やノウハウの蓄積・還元を通じた食料安全保障の確保③施設などのパッケージ展開と他国の課題解決への貢献による日本への富の呼び込み―を目指しています。
WGで具体的な検討対象となったのが、「植物工場」「陸上養殖」「新規食品」「食品機械」の4領域です。前者2つは気候変動による食料生産の不安定化や漁獲量の減少、後者2つは世界的な食料・たんぱく質の需要増、そして健康志向といった多様な消費者ニーズの高まりを背景に選ばれました。
しかし、これら4領域にはそれぞれ課題も存在します。植物工場と陸上養殖は初期投資や運営コストの大きさが、食品機械は特定工程への対応による開発費の高騰と、海外市場の難しさが指摘されています。また、新規食品は1社単独での市場開拓が困難です。

単体では解決が難しい環境負荷やコストを、協業によって解決

こうした課題を克服するための鍵が、異業種も巻き込んだオープンイノベーションです。例えば植物工場が電力会社と組めば、エネルギーマネジメントによって運営コストを削減できます。新規食品であれば、化学メーカーとの共同で培地や素材を開発することによって、競争力を一気に高められる可能性があります。
すでに大企業とスタートアップの協業も活発化しています。ある大手鉄道会社は陸上養殖と水耕栽培を組み合わせた循環型農法「アクアポニックス」を手掛けるプラントフォームと資本提携しました。これは、水を一切捨てない完全循環型の有機栽培を実現するもので、単体では解決が難しい環境負荷やコストといった課題を、協業によって統合的に解決するモデルです。

大手食品メーカーと食品機械スタートアップがコンソーシアム

一方、食品機械の分野では特有のジレンマがあります。特定の工程に特化すれば技術は高度になりますが、市場がニッチになりすぎるのです。この課題を解消するため、大手食品メーカー5社が、食品機械スタートアップのTechMagicと共同で「未来型食品工場コンソーシアム」を立ち上げました。ここでは、各社が抱える共通課題を協議し、共同開発プロジェクトを発足。専門技術やノウハウを共有しながらソリューションを開発し、市場導入を進めていく計画です。これは、業界全体で課題を解決し、新たな市場を創造しようとする先進的な取り組みと言えるでしょう。

今回は新たな市場獲得と開拓に力を入れている4社のスタートアップを紹介します。

規格外食材を活用した冷凍宅食サービス
株式会社ビビッドガーデン

ビビッドガーデン(東京都港区)は産地直送の通販サイト「食べチョク」を展開しており、全国の生産者ネットワークにより、国産で高品質の食材もしくは規格外食材を活用した事業提携が広がっています。新規事業として2024年からスタートした初のプライベートブランド「Vivid TABLE」 は、規格外食材を活用した少し贅沢な冷凍宅食サービス。忙しい共働きや子育て世帯に対しても「手間なく、ちゃんとおいしい食事」を支える存在を目指しています。また、規格外果実は大手飲料メーカーの全国ブランド商品にもなっています。

液体にしたシルク「腎臓テック3.0」で新市場を創造する
株式会社NEXT NEW WORLD

NEXT NEW WORLD(東京都港区)は、シルクを特許技術で液体にした、次世代の健康素材「カラダシルク®」を開発しています。この素材は、ナノレベルの穴が無数にあり、体の中に入ると、腎臓に負担をかけるアンモニアなどの毒素を腸でスポンジのように吸着し、体外へ排出するデトックス機能を持っています。同社はこの技術を「腎臓テック3.0」と名付け、病気になる前の健康維持や、病気の悪化を防ぐ新市場の創造を目指しており、ペット向けの健康食品「SILKFULL」や、人向けの飲料「ZINZO」といった商品を、動物病院やジムなどで展開しています。

お米を主原料に、乳や卵を一切使わない植物性の代替乳製品を開発
株式会社Kinish

Kinish(キニッシュ、東京都渋谷区)は、お米を主原料に、乳や卵を一切使わない植物性の代替乳製品を開発しています。主力製品であるアイス「The Rice Creamery」は、食物アレルギーを持つ人でも安心して楽しめる、新しい食の選択肢として注目されています。強みは独自の革新技術にあり、植物工場で効率よく育てられる、草丈約20cmの特別なイネの栽培技術を確立。さらに、バイオ技術を使い、牛乳と同じタンパク質「カゼイン」を含む新品種のイネ開発にも成功しました。原料の生産から製品化までを一貫して行い次世代の食インフラ構築を目指します。

ヴィーガンにも対応した手軽にクッキー作りが楽しめるカラフルな生地
Coloridoh Inc.

Coloridoh inc.(コロリド、東京都渋谷区)が提供する「coloridoh」は、手軽にクッキー作りが楽しめる、カラフルな生地です。この生地は粘土のように自由に形を作れ、あとはトースターで焼くだけでオリジナルのクッキーが完成します。乳や卵などアレルギーの原因となる28品目を使わず、ヴィーガンにも対応。着色料も全て天然由来なので、食の制限がある人でも安心して参加できます。企業のイベントや研修などで、年齢や国籍などを問わず、誰もが一緒にもの作りを体験できる、新しいコミュニケーションツールとして注目されています。

日本の国土と食の未来を守るため、農林水産業の振興は国家的な重要課題です。政府は国内の食料自給率を高めると同時に、2030年に農林水産物・食品の輸出額5兆円という目標を掲げ、「稼げる農林水産業」への転換を急いでいます。そのためには世界トップレベルにあるスマート農業技術の開発・実装を加速させるとともに、世界の多様なニーズに応える高付加価値な日本の食を生み出す必要があり、フードテック系スタートアップの存在意義は一段と高まるでしょう。

▼テーマリーダーProfile


デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

ビジネスプロデュース事業部
インキュベーション&アライアンスユニット

金谷 信明

・前職
複合機メーカーにてエンジニア、新規事業開発に従事
・現職
大企業におけるイノベーションの創出
戦略・KPI・制度策定
制度・プログラム運営
事業伴走
研修・人材育成
自社における新規事業創出
Startup Compass
・好きな食べ物
カレー

~イノベーショントレンドを定期的にキャッチアップされたい方へ~

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