モーニングピッチ

イノベーショントレンド

 

\イノベーショントレンド解説/

この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。高市早苗首相は経済安全保障や持続的成長の要となる17の戦略分野に財政資源を集中投下します。こうした国の動きを踏まえ2026年のモーニングピッチでは「日本成長戦略シリーズ」と題し、戦略分野について特集を組む予定です。第一弾は1月15日に開催した経済安全保障特集です。

重要技術の流出防止のためにも経済安保は不可欠

経済安全保障は、国家が経済的な手段を通じて国益を守る取り組みで、軸は①自律性の向上②優位性と不可欠性の確保③国際秩序の維持・強化への貢献―です。言い換えると、必要な技術と産業基盤を強化できなければ、国際秩序の中での日本の立ち位置は相対的に低下するという危機感が前提となっており、経済安保は非常に重要な問題です。
日本は経済安保を強化しなければ、地政学リスクの影響を直に受け、海外への経済的な依存が弱点となり、サプライチェーンの維持や重要技術の流出防止が難しくなります。日本の強みである先端技術は、スタートアップが担っている場合が多い。だからこそ、スタートアップ・大企業・官公庁が連携し、必要な技術を戦略的に支援・育成して社会実装と成長を加速させることが重要です。

令和8年度予算で17の戦略分野へ集中配分する方針が明確になる

政府が成長戦略で集中的に支援するために定めた分野はAI・半導体やデジタル・サイバーセキュリティ、航空・宇宙、造船、マテリアル、創薬・先端医療などと多岐にわたっています。
令和8年度予算でも「危機管理投資」と「成長投資」に重点を置き、17の戦略分野へ集中配分する方針を明確化しました。中でも世界の産業構造転換を牽引するAI・半導体は成長投資の最大の柱に据えて、予算が大幅拡大。関連スタートアップにとっては研究開発・量産化・人材確保・国際展開の追い風となります。

これまでは防衛力の強化という観点からスタートアップとの官民連携が芽生えていました。今後はディープテックやサイバーセキュリティといった領域で、サプライチェーンの強靭化や技術流出防止などが重要な課題となるため、官民連携の動きはさらに注目を集めることになるでしょう。
ただ、日本の経済安保は単独で達成するのが難しく、多国間協調とセットで加速します。このため、お互いの力を活用し補えるところは、よりスピーディな形で緊密な協力関係を築き、必要な技術の立ち上げ、スケールアップを推進していくことは非常に重要な考えです。欧州はウクライナ戦争以降、「自分たちの安全は自分たちで確保する」という現実的な意識を強め、防衛・安全保障の基盤づくりに力を入れています。非常に学ぶべき点があると言えるでしょう。

EUとの間で共同研究・実証の機会は着実に増えている

EUは次期7カ年計画(2028~34年)で防衛・宇宙の伸び率を現行比で約6倍と大幅に引き上げ、脱炭素関連技術と並ぶ重点領域に据える見通しです。民間投資も活発化し、防衛・宇宙テック系スタートアップへの資金流入が加速しています。日本にとっても英国を含む欧州諸国との関係強化は重要な課題で、相互補完できるサプライチェーンや共同研究・実証の機会は着実に増えています。
その要となるのがEUの研究・イノベーションの枠組みである「Horizon Europe」です。基礎から実証までを対象に大型の助成を行い、日本も参加し日本企業・研究機関が申請可能になります。テーマはヘルスケア、デジタル、モビリティ、エネルギー、セキュリティーなど幅広く、100万ユーロ(約1億8000万円)規模の支援もあります。こうした新たな動きを好機会ととらえながら、日本の安全保障の価値を共有するテクノロジーの促進を、ともに目指し発展していけるのではないでしょうか。
今回は経済安全保障で重要な役割を果たす①サプライチェーンの強靭化②先進的な技術の獲得および技術流出の防止③サイバーセキュリティ対策の強化-という3つの領域に属するスタートアップ5社を紹介します。

今回は経済安全保障で重要な役割を果たす①サプライチェーンの強靭化②先進的な技術の獲得および技術流出の防止③サイバーセキュリティ対策の強化-という3つの領域に属するスタートアップ5社を紹介します。

サイバーリスクの可視化と対策判断を支援
株式会社Aufense Technologies

Aufense Technologies(オーフェンステクノロジーズ、東京都文京区)は、サイバーリスクの可視化と対策判断を支援するプラットフォーム「Aufense One」を提供しています。セキュリティー人材の不足や最高情報セキュリティー責任者(CISO)の設置が進まないことによって優先度判断が滞る課題に対し、事業継続の観点からリスク整理・優先順位付けを実現。経営層は事業継続や経済安全保障の観点からセキュリティー投資の判断を客観的に行うことができます。今後は製造・流通・インフラ等へ拡大し、蓄積データを活用した意思決定支援の高度化を目指します。

EV・再エネ用リチウムイオン電池(LIB)に不可欠な超高純度リチウムを安定供給
LiSTie株式会社

LiSTie(リスティ、青森・六ケ所村)は、EV・再エネ用リチウムイオン電池(LIB)に不可欠な超高純度リチウムの安定供給を目指しています。量子科学技術研究開発機構(QST)の基盤技術を発展させた世界初の回収技術「LiSMIC」を核に、塩湖・鉱石・ガス田からの回収や使用済LIBリサイクルの社会・技術課題を解決。今後は大型LIBリサイクルを事業化し、回収メーカーと連携してコンテナ型回収装置(LiSMICユニット)や分離膜を販売、早期の社会実装と資源自立に貢献します。

M&A・投資のファイナンス現場に特化したAIアソシエイト
Herix

Herix(ヘリックス、東京都中央区)は、M&A・投資のファイナンス現場に特化したAIアソシエイト「Aidiligence」を提供しています。プロジェクト資料をアップロードするだけで、データ整理、デューデリジェンスのリスク洗い出し、Q&A提案、レポート作成までを自動化し、作業数を大幅削減。これによって担当者は本質的な意思決定に注力できます。データに基づいた判断をサポートし、財務・法務のチーム横断で活用できるため、今後は意思決定の前後工程までAIで連携。投資プロセス全体の効率化と品質向上、生産性とガバナンスの両立を図ります。

世界125カ国で利用される衛星データ解析プラットフォームを運営
株式会社Solafune

Solafune(ソラフネ、東京都千代田区)は、世界125カ国で利用される衛星データ解析プラットフォームを運営し、3万5000を超えるAIモデルを集約。防衛・インテリジェンス、森林・農業、インフラ監視・保全、金融クレジットなど官民向けに解析機能を提供しています。アフリカで培った資源探査の知見を生かし、政府機関向け金属資源管理・探査AIである「SHIGEN AI」も展開。直近は日本企業向けソリューション開発を進め、複数の衛星データとAIモデルを組み合わせた新サービスの創出を目指しています。

地政学リスクをウォッチ
株式会社ゼロボード

ゼロボード(東京都港区)の「地政学リスクウォッチ」は、地政学リスクと経済安保に強いオウルズコンサルティンググループと共同開発したクラウドです。設問に回答するだけで最新動向を踏まえた自社の対応状況を客観的に可視化。事業影響の大きいリスクの洗い出しと優先順位付け、継続的なヘルスチェックに活用可能です。今後はグループ各社の対応状況を横串で把握し、親会社・持株会社が一元管理できる機能を拡充し、グループ全体のガバナンス強化を支援します。

日本は今、経済安全保障という危機対応を、国家の成長へと転換させる戦略を掲げています。サプライチェーンの強靭化やエネルギー・デジタル安全保障といった重要分野で革新的な製品・サービスを国内に実装し、それを世界の課題解決へと繋げる役割を果たすのが、機動力と専門性を兼ね備えたスタートアップです。政策や公的調達の拡充はスタートアップにとって力強い追い風となり、関連分野への投資はさらに加速するでしょう。

▼テーマリーダーProfile

 

デロイトトーマツ ベンチャーサポート株式会社
欧州ユニット

床島 遼

 

・米国公認会計士、フランス語DELF B2、Studio 2050 Ventures Advisor
・専門地域は欧州、専門産業領域は防衛・デュアルユース イノベーション。欧州スタートアップ、VCネットワーク多数
・総合商社、外資系コンサルティングファームを経て現職
・キャリアを一貫して欧州地域でのイノベーション投資領域に 携わっており、デロイトトーマツベンチャーサポートにおいて欧州地域を管掌
・政府・自治体要人の欧州来訪時の現地動向解説を多数実施
・EU助成金のマネジメント手法を熟知しており、2026年1月から日本が参加した欧州連合の取組・Horizon Europeについても ご支援が可能

 

~イノベーショントレンドを定期的にキャッチアップされたい方へ~

—————————————————————————————————————————————-

Morning Pitchでは、上記のような各回テーマ概観を

有料会員様限定でお届けしています

 解説資料・・・Morning Pitch有料会員

—————————————————————————————————————————————-