モーニングピッチ

イノベーショントレンド

 

\イノベーショントレンド解説/

この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。今回は、6月13日に開催した「モビリティ特集です。

AI・EV中心に10億㌦以上を調達したスタートアップが相次ぐ

陸海空におけるヒト・モノの移動に関わるモビリティ分野は、関連する技術やイノベーションを軸に、Mobility Techとして11領域に分類可能です。具体的には①自動運転②電気自動車(EV)③車両管理&コネクティビティ④貨物輸送⑤ラストマイル配送⑥公共交通ソリューション⑦先進エアモビリティ⑧オートコマース⑨マイクロモビリティ⑩配車サービス⑪水上・水中モビリティ-と多岐にわたります。
モビリティ関連のスタートアップは取り組む事業内容や課題に応じて、さらに細分化されています。例えばEVに関してはEVの製造からバッテリーの生産に至るまで細別されており、各領域で多くの企業が存在します。
2023年の資金調達動向を領域別にみると、調達額・取引数ともにEVが最も多く、自動運転と車両管理・コネクティビティがEVに続いています。
モビリティテック関連のスタートアップは大規模な資金調達を行っており、23~24年のグローバルの調達ランキングは、1ビリオン(10億)㌦を超える投資が5社に行われており、大きく成長しているところにはお金が集まっている状況です。昨年から今年5月にかけてもっとも調達額が多かったのは、AIを活用した駐車場プラットフォームを提供する米Metropolis(メトロポリス)。EV用バッテリーを製造するVerkor(ベルコール)、自動運転システムを開発する英Wayve(ウェイヴ)、自動運転システム開発用ツールを提供するScale AI(スケール)がそれぞれ10億㌦を超えました。中国のEVメーカー、NETA Autoは23~24年に大型調達を行っており、合計金額はMetropolisに肉薄しています。

生成AIとの融合が進む

ここからは2024年のトレンドについて、触れたいと思います。

2024年1月に米ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES」の内容を踏まえると、今後、モビリティ業界で注目すべきトレンドは①生成AIとの融合②クルマのスマホ化③薄型EV④水素を使う燃料電池車⑤ダイバーシティ⑥自動運転のオープンソース化⑦EV設備と家電との連携-です。特に注目されているのは生成AIとの融合で、キーワードになってくるかと思っています。CESへの参加企業の取り組みを見ますと、独フォルクスワーゲン(VW)はChat GPTの車載システムへの統合を進めているほか、Amazonは自動運転システムの開発領域に生成AIを活用しています。

日本では今年の4月、東京や京都などの限定したエリアで、ライドシェアが一部解禁されました。タクシー事業者の管理の下で、地域の自家用車や一般ドライバーによって有償で運送サービスを提供することを可能とする制度です。少し後ろ倒しになるでしょうが、今後、対象地域の拡大に加え、本格的なライドシェア事業が可能になるものと想定されます。

CASE、MaaSの流れは鉄道、バス、航空会社などにも波及

また、モビリティの進化に伴い、次世代車の柱となる技術である「CASE=コネクテッド(インターネットにつながる車)、オートノマス(自動運転)、シェアリング(共有)、エレクトリック(電動化)」という言葉が使われて久しくなります。その流れを踏まえて浸透しているのがMaaS(次世代移動サービス)。CASE、MaaSの流れは自動車業界だけでなく、鉄道、バス、航空会社などにも波及しています。

その先の動きとしては、膨大なデータにより交通体系を最適化し、異業種のさまざまなサービスと連携。これによってモビリティ革命を起こし、スマートシティの実現にも貢献すると考えています。

実際にモビリティ関連のビジネスは、さまざまな産業と融合しています。MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)は茨城県と連携し、車内で眼科スクリーニング検査やマイナンバーカードの申請受け付けなどを実施。大手不動産会社や大手航空会社・商社は空飛ぶクルマによる新たな移動サービス、遊覧の実証実験を実施しています。今後はこうした連携が加速するとみています。

昨年のモビリティ特集に登壇した企業も外部との提携に力を入れています。片道レンタカー事業を展開するPathfinder(パスファインダー)は、SaaS型駐車場管理サービスを提供するアズームと連携し、同サービスを導入している駐車場を発着場としました。SWAT Mobility Japan(スワットモビリティジャパン)は、物流向け配送最適化システムの機能強化に向けて、大手運送会社や電力会社から出資を受けました。

今回は自動運転、EV、車両管理&コネクティビティ、公共交通ソリューション、マイクロモビリティという領域から5社を紹介します。

 

三人乗り小型EVのシェアリングサービス(株式会社eMoBi

eMoBi(エモビ)は、オープン構造で三人乗り小型EVのシェアリングサービスを観光地向け中心に提供しています。運転しやすい構造で、ストレスなしに狭い道の走行や駐車も可能。地域の景色を楽しみながら移動が可能なサービスです。バッテリー交換によって充電残量の不安なく移動できるようにアップデートし、Webアプリ上で地域の情報を取得しながら楽しく回遊できる機能や、ワンウェイでの乗り捨てなどを可能にする仕組みの運用を試験的に行っています。当面は湘南と沖縄で集中出店を図る計画です。

電動モビリティに非接触給電システムを提供(株式会社パワーウェーブ

パワーウェーブは、波動の力を活用しバッテリー課題の解決を図り、充電するという概念を無くすことでカーボンニュートラルな世界を目指しています。電界結合方式という無線給電技術を用いた新しい伝送技術をベースに、電動モビリティに対し停車時の広範囲な自動充電や、走行中の動作中給電を可能とする非接触給電システムの提供を行います。また、モビリティと発電所・電力系統がワイヤレスでつながり続けることによって、電力の需要側での制御を可能にし、エネルギー提供の最適化にも貢献します。

凸凹道でも姿勢を崩されにくく、低速からでも安定して発進(株式会社ストリーモ

ストリーモは自分のペースで移動できる立乗り三輪電動モビリティを開発・販売しています。独自のバランスアシストシステムにより、凸凹道でも姿勢を崩されにくく、低速からでも安定して発進するため、40~70代の利用者が80%以上を占めています。また、工場や物流施設、アミューズメントパークなどの従業員が運転しているように、これまでとは異なるユースケースを生み出しています。観光地など人の多い場所でも、歩行者との親和性が高く、管理者側でも上限速度を設定しサービス提供します。

3次元地図の取得から活用までのトータルソリューション(株式会社マップフォー

マップフォーは3次元地図の取得から活用までのトータルソリューションを提供します。3次元地図は、測量、インフラ点検などあらゆる領域で利活用が進んでいます。特に自動運転領域での成長率が大幅に成長する見通しです。同社が提供しているのは3次元地図の取得から活用までのトータルソリューション。誰でも簡単に取得でき、高速処理を行える点が特徴で、自動車や電力、鉄道など、あらゆる産業の多様なユースケースに対応しています。

モビリティとガイドシステムを組み合わせたプラットフォーム(合同会社Limot(旧MOBITASU)

MOBITASU(モビタス)はモビリティとガイドシステムを組み合わせたプラットフォームを提供します。GPS連動型の4カ国語ガイドアプリを搭載し、位置情報データをデバイス・アプリなどに活用して無人の運行管理を実現。NFT技術を活用した謎解きやクーポン機能を搭載しており、人の手を介さずに「人力車」のような楽しく安全な移動体験を目指します。サービスを開始して10カ月で、小学生から高齢者まですでに9000人に利用されています。

 

日本版ライドシェアの本格解禁の結論は先送りされましたが、ライドシェアはタクシーとしての活用のほか、コミュニティーバス、貨客混載など多様な形態が登場しつつあります。また、8月からは九州MaaSが始動したほか、都市型MaaSの実現に向けた動きも活発化しており、モビリティ系スタートアップと企業・自治体の間で連携が加速しそうです。

 

 

▼テーマリーダーProfile

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

インダストリー&ファンクション事業部

戸嶋 大也(としま ひろや)

 

大学卒業後、大手日系自動車OEMにて、新興国地域の商品企画やバリューチェーンに係る事業開発、オートオークション事業を行う関連会社の経営管理等を経験。現職では、モビリティおよび気候変動領域を軸とし、大手各社のオープンイノベーション・新規事業開発を支援。また、官公庁アクセラプログラム等を通じて、幅広い領域のスタートアップに対して個別伴走支援を実施。

 

 

 

~イノベーショントレンドを定期的にキャッチアップされたい方へ~

—————————————————————————————————————————————-

Morning Pitchでは、上記のような各回テーマ概観の解説を

資料や動画にして有料会員様限定でお届けしています

 解説資料・・・Morning Pitch有料会員

 解説動画・・・Morning Pitch Innovation Community(MPIC)会員

—————————————————————————————————————————————-