モーニングピッチ

イノベーショントレンド

 

\イノベーショントレンド解説/

この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。

 

今回は、2023年5月25日に開催した「データ活用医療特集」です。

ビックデータによる解析結果を医療に応用

今までは電子カルテなど既存のアナログデータを整理し、構造化することが医療とITの関係でした。それが近年では、計測機器の進化やIoT機器の台頭で取得できるようになった大量のデータを解析し、パーソナライズ(個別化)した高度な医療を提供するといった状況へと変化を遂げております。そうした動きを踏まえ、ビックデータによる解析結果を医療に応用することをデータ活用医療と定義しました。

この領域における全世界の資金調達の潮流を見ますと、デジタルヘルス関連の資金調達額は、過去20年間にわたって堅調に推移してきました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要増により、2021年から22年にかけては急速に増えましたが、他の分野と同様に金利の上昇や経済の不透明感で、22年後半からは一時的に後退局面入っております。しかし、23年の1Q(1~3月)時点ではコロナ前の水準をキープしており、今後は世界経済の回復に伴い伸びていくと想定されます。

デジタルヘルス領域に大型資金が相次ぐ

国内もグローバルと同様に一部で後退した一方、医療関係者間のコミュニケーションを促進するアプリや診断支援のAIなどを提供する会社に対し、大型の資金調達も行われています。デジタルヘルス領域は今、国内においても注目度が高い分野であるといえます。

電子カルテをはじめとした医療のICT(情報通信技術)化は、2000年代のインターネットの広がりとともに、進んできましたが、科学技術の進展によって大きな変化が生じたのは2020年です。20年以降の医療の特徴は、IoT機器を通じてさまざまなデータがリアルタイムで取得可能になった点です。また、AIを活用して取得データを解析し、診断支援や個別最適化した医療を行えるようになりました。さらにAI解析ができるようになったことで、医者を介することなく、個人での健康管理も進められるようになっています。

データ活用医療を取り巻く国内トレンドについて4つに分けて説明します。

多角化とPHRの本格化が進む

一つ目は多角化です。医療従事者も患者も治療に当たって、さまざまなオプションを選べるようになってきております。代表的な動きは診療報酬の改定で、22年にはオンラインでの初診料が対面診療の87%で算定できるようになりました。また、20年に初めて保険適用に治療用アプリが承認されて以来、次々と参入が続いています。

二つ目はパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の本格化です。個人の検査・医療データをデジタル化し、診断や治療に生かすために持ち運びができるようにするPHRの普及に向けた取り組みは2007年あたりから始まっておりましたが、今一つ普及が進んでいない状況でした。しかし、23年4月からはマイナンバーカードを保険証で使うため、オンライン資格確認システムの導入を医療機関・薬局で原則として義務付けるなど、具体的な施策が実行され始めてきており、PHR活用の土台が構築されつつあります。

三点目は医療AIの普及で、今回注目したいのは診療で使われる、医療機器の認定がされているAIです。

AI問診の分野などで大企業との連携が加速

18年に日本で初めて内視鏡AIが医療機器として承認されてから、22年末までで医療機器として承認された医療AIは23品目となり、今後も増え続けていく見通しです。22年には日本で初めて、AI医療機器での治療の保険適用も開始されました。22年12月にはAIを搭載したインフルエンザ検査医療機器が、1検査当たり、305点の診療報酬がつきました。

四点目は大企業の取り組みが活発な点です。もともと健康管理やヘルスケアなど、ライトな健康改善に取り組んでいた企業が医療分野へと出資したり、サービスの提供を進めています。

大企業とスタートアップの協業も、緊急医療データプラットフォームやAI問診といった事業分野で顕在化しています。

今回はオンライン治療、ゲノム情報、AI診断支援という領域から5社を紹介します。

ゲノム情報に基づき疾病予防ソリューションを個別化(株式会社Zene

Zene(ジーン、東京都千代田区)は、遺伝子検査である高精度ゲノム解析サービス「Zene360」を、健康保険組合を中心とする保険者や健康経営に注力する企業に向けて提供しています。サービスではゲノム情報を使い、かかりやすい病気を高精度で調べて個別化した疾病予防ソリューション展開、リスクの高い人に向けて集中的に行動変容を促します。また、健康保険組合との連携によってレセプト(診療報酬明細書)や健診に関する情報が集まるため、個別化した商品の開発を進めていきます。

オンラインで専門医をつなぐ(Wivil株式会社

Wivil(ウィーヴィル、東京都港区)は患者の悩みと専門医をつなぐオンラインメディカルコミュニティ「 DOCEO(ドケオ)」を運営しています。DOCEOの中には、「ROOM」という医師が開設したオンライン上のクリニックが存在。ROOMは参加する医師の専門性ごとに細かく分類されており、利用者の悩みに応じて、専門医に直接つながることができます。今後はより真剣に専門医を必要としている患者に向けて、バーチャルクリニック事業として展開していきます。

オーダーメイド型の予防医療(株式会社ウェルネス

ウェルネス(東京都港区)は、専属医師によるオーダーメイド型の予防医療を実現するサービス「Wellness」を提供しています。その中の「Wellness membership」は、ビジネスパーソン向けに包括的なデータに基づく予防をサブスクリプションで展開。「Wellness App」は、医療データやライフログデータを統合することで、自分が受けるべき検査、最適な食事や運動・サプリアプリで提案されます。今後、全医療ヘルスケア情報を1つのアプリに集約し、データ×予防のプラットフォームを目指します。

ゲノム医療の負担を軽減化(株式会社テンクー

テンクー(東京都文京区)は、ゲノム医療のデータ解析ソリューション「Chrovis(クロビス)」を開発・提供しています。がんの特徴をゲノムレベルで理解し多量の情報を解析、データインテリジェンスの力で適切な治療方法を検索できるサービスを行い、ゲノム医療にかかわる負担の軽減化を図っています。例えば「医師向け判断補助資料」では検査結果から薬剤や治療候補を提示、医師の手作業を解放します。ゲノム解析は国も力を入れている分野で、クロビスの薬事申請を視野に入れており、将来的にはアジアでの展開も目指します。

病理診断の精度・スピードを高める(メドメイン株式会社

メドメイン(福岡市中央区)は、病理をAIによって解析するソリューション「PidPort」を提供しています。病理医は組織片から細胞レベルで病気の原因を調べ正確な診断を下す専門医であり、診断における最後の砦ですが、その数は全国で約2600人と不足しています。また、診断精度には個人差があり、医師は誤診のリスクと常に戦っている状況です。こうした現状を踏まえ開発されたPidPortは、画像解析により医師の目をサポートし、病理診断の精度・スピードを高めるというソリューションです。

超高齢化社会の進展に伴い、健康寿命の底上げが喫緊の課題となっています。普段の生活から体の状態を把握でき、予防医療や病気の早期発見に有効なデジタルヘルスは重要な役割を果たすだけに、データ活用医療系ベンチャーのさらなる活躍に注目が集まります。

▼テーマリーダーProfile

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

イノベーションソリューション事業部

伊関 友崇(いぜき・ゆたか)

 

 

■大阪大学 バイオ情報工学 修士課程卒業
研究テーマ:遺伝子発現データを用いた細胞のクラスタリング
■DTVS
・新卒入社
・飲料メーカー向けヘルステックスタートアップのグローバルスカウティング、製薬企業のオープンイノベーション支援(DX支援)などを担当

■過去のインターン先
大阪大学ベンチャーキャピタル、外資就活ドットコム、MaaS系スタートアップなど

 

 

 

~イノベーショントレンドを定期的にキャッチアップされたい方へ~

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