モーニングピッチ

イノベーショントレンド

 

\イノベーショントレンド解説/

この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。

今回は、2023年3月30日に開催した「ダイバーシティ特集」です。

米ナスダックでは上場規則

日本語で多様性と表現されるダイバーシティとは、さまざまな性別、人種、年代、バックグラウンドなどの要素を持つ人々が、共存している状態を示します。

企業経営でもダイバーシティを重視するようになり、経済産業省はダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義。経団連はダイバーシティ&インクルージョン(D&I)について「多様性を受け入れ、企業の活力とする考え方」と位置づけています。

株式市場でもダイバーシティが問われています。米ナスダック市場では2021年から上場ルールとして、取締役を選定する上での2つのダイバーシティ関連の要件が課されました。取締役の中に女性を自認している人と、過小評価されている社会的少数派かLGBTQ+(性的少数者)などのマイノリティを自認している人を含めることになったのです。東京証券取引所も、取締役会はジェンダーや国際性の面を考慮して、構成されるべきとの記述があります。

日本の企業が目指すべきダイバーシティの実現に向けたガイドラインとして、経済産業省は「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を2017年より策定・公表しています。「ダイバーシティの取組を全社的・継続的に進めるために、推進体制を構築し、経営トップが実行に責任を持つ」や「属性に関わらず活躍できる人事制度の見直し、働き方改革を実行する」など、実践のための7つのアクションとして、組織全体としての指針を示しており、多くの大企業が順守し始めました。

全方位からの多角的な視点で、組織のレジリエンスが高まる

これまでの社会は、少数派の視点が意識される機会はあまりありませんでした。しかし、DX化が進み、より個々人へのアプローチが行いやすくなった現在の市場では、少数派も含むすべての人へのターゲティングが重要。「死角」を無くすような多様性を重視した戦略を踏襲しない限り、勝つことが難しくなっています。ダイバーシティを踏まえた全方位からの多角的な視点は、組織のレジリエンス(強じん力)を高め、市場のニーズをカバーすることにつながります。

ダイバーシティへの取り組みは、成果にも確実に直結しています。コカ・コーラ ボトラーズジャパンとして初めてのアルコール飲料「檸檬堂」は、一時期売り切れになって手に入らなかったほど大人気のレモンサワーですが、女性を含む多様なバックグラウンドを有するプロジェクトメンバーによって生み出されました。今まで気づけなかった潜在的なニーズを、多様な考え方を取り入れることによって開拓し、大ヒット商品として結実。この取り組みが認められ、経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」にも選出されています。

ダイバーシティ指数と企業業績は比例

また、ダイバーシティ指数が高い組織は、企業業績の数値が高くなる傾向も出ています。ジェンダー比に加え女性比率が高い企業や、民族・文化的多様性の指数が高い企業は、下位のグループに比べて業績や収益性が高いともいわれています。ただし、人材の多様化に依存するだけでは伸び率に限界があることも徐々に顕在化しており、一企業単独による取り組みには自ずと限界がある、と指摘されています。

そこで注目されているのが、スタートアップの存在です。今まで埋めることができなかった社会のニーズを、スタートアップ特有のイノベーションで対応することが期待されています。

特に社会や企業によるダイバーシティの促進を目的としたスタートアップが注目されています。昨年のモーニングピッチのHR特集に登壇したVALT JAPAN(ヴァルト ジャパン)は、障害や疾患、難病を抱える就労困難者に特化した受発注プラットフォーム「NEXT HERO」を展開。自分らしく働ける環境や機会を提供し、成長しています。

スタートアップと自治体、大企業との連携も進んでいます。VALT JAPANは大阪府茨木市と協業し、心身または環境などの諸要因による就職困難者が、コロナ禍でも就労の機会が得られるよう在宅テレワーク導入やICTを活用したサポートを共同で行いました。広島県三原市はファミワンと協業し、女性特有の悩みをLINEでサポートするサービスを提供しています。大企業や自治体がこれまでカバーしきれていなかったニーズを満たし、より多くの人々へアプローチをすることで、社会課題の解決につながっている点が、連携による相乗効果です。

ダイバーシティの推進をサポートするベンチャーは年々増加しており、今回は5社を紹介します。

ワークプレイスのプラットフォームを運営(株式会社AnyWhere

AnyWhere(東京都武蔵野市)は、ワークプレイスのプラットフォーム「TeamPlace」を運営しており、コワーキングスペース、シェアオフィスの個室ブース、新規事業作りセミナー、地域プロジェクトの募集ページ作成、専門家とのコラボレーションなどのサービスを提供しています。また、日本全国のコワーキングスペースを利用できるパスも展開。これまでの地域限定だけでなく、日本全国110カ所以上のワークプレイスを月10時間から利用することができます。

日本語が話せるアジア技術者の採用を支援(株式会社One Terrace

One Terrace(東京都千代田区)は、大学で専門的な知識を学び日本語が話せるベトナム・ミャンマー・韓国人技術者の採用を支援するサービス「チョクトリ」を展開しています。国内では理系離れに伴う技術者不足の問題が深刻化しており、海外から直接、若手エンジニアを採用する新しい動きが注目されつつあります。チョクトリはこうした動きに呼応したサービスで、仙台銀キャピタル&コンサルティングと共同で、宮城県内の製造業や建設業の人材確保支援を行っています。

デジタル障害者手帳と配車アプリを連携(株式会社ミライロ

ミライロ(大阪市淀川区)は、障害のある当事者の視点を活かしたユニバーサルデザインのコンサルティング事業を展開しています。特にデジタル障害者手帳「ミライロID」は紙の手帳の代替手段としてだけでなく、障害者と事業者をつなぐ架け橋となっています。その一例がタクシーの配車アプリとの連携で、車いすユーザーがスムーズに乗車できます。電子クーポンの提供や広告配信によって、外出や消費もしやすくなり、事業者にとっては新たな層の獲得も可能となります。

子どもの見守りスペースと執務空間が隣同士(株式会社ママスクエア

ママスクエア(東京都港区)は、子どもの見守りスペースと執務空間を隣接させた「キッズスペース隣接オフィス」を提供しています。保育園などの既存施設には位置づけられず規制も厳しくないため、比較的簡単に導入できます。また、不規則な働き方に応じた勤務時間の調整を独自のアルゴリズムを用いて行うなど運営ノウハウが蓄積されており、女性活躍を進めたい企業へ展開することも可能です。今後は行政連携を拡大し各地域の企業に対して事業ノウハウを提供、全国展開を目指します。

ライフイベントごとに、マイノリティの課題解決を図る(株式会社JobRainbow

JobRainbow(東京都渋谷区)はダイバーシティ採用プラットフォーム「ジョブレインボー」や女性のためのマッチングアプリ「PIAMY」、「セクシュアリティ診断」ツールなどを提供、D&Iの領域で事業を展開しています。一連の診断ツールをきっかけとして、多様な人材が会社に入って活躍できる環境づくりまでをサポート。最終的には、介護、金融、住宅、結婚、教育などのライフイベントごとに、マイノリティの課題解決につなげたい考えです。

 

政府は、東京証券取引所プライム市場に上場する企業に対し、2025年をめどに女性役員を最低1人以上選任し、30年までに女性役員比率を30%とするように促しています。企業への行動変容の働きかけに伴い、ダイバーシティをめぐる動きはこれからも活発化する見通しで、関連スタートアップも台頭するとみられます。

▼テーマリーダーProfile

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

イノベーションソリューション事業部

藤野 菜々歩(ふじの・ななほ)

 

 

■国際教養大学(秋田県)グローバル・スタディズ課程卒業

■今までのインターン先
・株式会社レアジョブ
・タクトピア株式会社
・レオス・キャピタルワークス株式会社

■DTVS
・新卒入社
・Morning Pitch 事務局運営
・スタートアップの海外展開支援を担当

 

 

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