モーニングピッチ

イノベーショントレンド

 

\イノベーショントレンド解説/

この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。

 

今回は、2022年12月8日に開催した「急成長グローバルベンチャー特集」です。

日本を代表するスタートアップも、海外の先行事例を参考に成功

新規事業を見ていると、うまく行かない場合は(1)世界で成果を上げているビジネスモデルのインプット(2)市場環境・トレンドのインプット(3)自社のリソース・アセット・強みの棚卸と解釈(4)新規事業の目的・目標の明確化-のうち、どれかを疎かにしていることが多いようです。この中で最も努力でカバーしやすいのが、圧倒的な量の情報をインプットすることです。これを抜きにして事業は作れません。そしてこのインプットを拡大する鍵が海外スタートアップの情報です。

今や日本を代表するスタートアップも、海外の先行事例を大いに参考にして成功しました。労務管理クラウドのSmartHRは、創業者の宮田昇始氏が、日本で事業の立ち上げを模索する中で、米国のZenefits(ゼネフィッツ)が提供するクラウド管理サービスをヒントに、Smart HRを創業しました。

ビズリーチは、南壮一郎代表が、転職市場での新たなビジネスモデルを考えていたところ、既に米国では数百万人の求職者と数万社の企業が、高収入の職種を対象とする就職・転職サイト、The Ladders(ラダーズ).comを使っていることを知り、同社のビジネスモデルを参考にしてビズリーチを創業しました。

フランスはユニコーンの目標数を3年前倒しで達成

経営が順調な海外スタートアップの数は膨大なので、今回は企業価値が10億㌦以上の未上場企業であるユニコーン企業を一つの指標にします。

昨年12月時点で全世界のユニコーンは1200社ありますが、日本はその0.5%に相当する6社のみです。海外は米国が圧倒的に多く半分以上を占め、インドは2021年だけで44社のユニコーンが誕生、急激に成長しています。その中で注目したいのはフランスの事例です。

フランスは2016年ごろまで、ユニコーンが1社程度しかいない国でした。しかし、マクロン大統領が就任してからの積極的なスタートアップ振興策が功を奏し、2025年までにユニコーン25社という目標を、3年前倒しして2022年に達成してしまいました。テック企業で働きたい人をさまざまな形で優遇し誘致する「フレンチテックビザ」を導入するなど、ヒト・モノ・カネがスタートアップに流れ込む仕組みを作っており、次は2030年に100社を目指しています。

日本はユニコーン100社の輩出を目指す

大きく出遅れているように見える日本ですが、経団連の提言や、それを受けて政府がユニコーンを将来的に100社まで増やす目標を掲げるなど、これから盛り上がる兆しも見せています。

 

2022年も世界では、ユニークなスタートアップが次々と頭角を現しました。こうしたスタートアップを定点観測することで、イノベーションに関する多くの知見を得られます。ここで2022年に新たにユニコーンとなった企業を紹介します。米Miro(ミロ)は、オンラインでのワークショップやアイデア出しを実現するオンラインホワイトボードツールを提供します。

米Yuga Labs(ユガラボ)はNFT制作スタジオで、人気NFTコレクションを手掛けます。イーロン・マスク氏が設立したのは、自動車用の高速地下ネットワークを作るThe boring company(ボーリングカンパニー)。フランスのQonto(コント)は、フリーランスなどの小規模事業者に特化したオンライン銀行を提供します。

日本の大企業と海外ユニコーンとの連携も進む

世界での時価総額が上位クラスのユニコーン企業はいずれも、ユニークで強力なビジネスモデルを誇っています。こうした世界の最先端のモデルを定点観測していくことで、ビジネスに関する大量のインサイトが手に入ると考えています。

損保ジャパンと米Palantir(パランティア)が協業しているように、日本でも大企業と海外ユニコーンの連携は進んでおり、今後のビジネスチャンスの1つだと考えています。デロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)では、こういった海外スタートアップと日本企業の協業をもっと増やしていきたいと考えています。

本日は急成長ベンチャーの代表産業であるソフトウェアサービスに焦点を当てて、米国と中国、フランスから5社のスタートアップを紹介します。

 

ダウンタイムを最小限に抑制するシステム(PagerDuty株式会社

米PagerDuty(ページャーデューティー)は、システムのダウンタイム(停止時間)を最小限に抑え、障害を未然に防ぎ、DX運用をサポートするシステムを提供しています。デジタルサービスの障害をAIが感知し、適切な担当者を自動でアサイン、可能な限り自動で修復します。修復後も再発防止対策を行うのに必要な機能を備えています。今後は、導入支援だけでなく、導入後のROI(投資利益率)分析などを行い、アウトソース先になっているシステムインテグレーターとの連携も進めていきます。

ECサイトを他社商材も含めたマーケットプレイスに拡張(Mirakl株式会社

Mirakl(ミラクル)はフランス発のユニコーン企業です。eコマースを行う際は、大手プラットフォーマー傘下での出店の場合、集客力がある一方で詳細な顧客データが把握できず、価格競争や商品をコモディティ化してしまう恐れがあります。一方、自社サイトだと販売は自社在庫品に限定され、SEO(検索エンジン最適化)に難があるなどの課題があります。Miraklが提供するプラットフォームは、企業のECサイトを、自社在庫品だけではなく他社商材も含めたマーケットプレイスに拡張することが可能です。

チャットやビデオ会議機能などを一つのアプリに集約(ByteDance株式会社 Lark Japan

中国のByteDance(バイトダンス)は急成長ベンチャーで、従業員の数は2019年の6万人から約2倍の11万人以上へと増えています。提供しているサービスは、次世代型ビジネスツール「Lark(ラーク)」。チャットやビデオ会議、メール、自動議事録機能など、業務で必要な機能を一つのアプリに集約し、150カ国以上のマーケットで35言語に対応したサービスを展開しています。コロナによるリモートワークの普及で大きくなったIT担当者の負荷が、軽減されるようになった点が評価されました。

世界中の人材をリモート雇用する企業を支援(Deel Inc.

米Deel(ディール)は業務委託する際に必要なサービスをワンストップで提供しています。代替雇用や契約書作成、福利厚生、コワーキングスペースなどを利用でき、大規模なプラットフォームによるナレッジ、データ分析などを強みとしています。一連のサービスによって世界中の人材をリモートで雇用する企業の労務管理やペイロールを支援しており、拠点がない国々においても人材雇用を柔軟に進めることが可能です。今後は、言語とカルチャーの違いを乗り越えるために、日本独自のエコシステムを強化していきます。

企業のあらゆる支出をクラウドで可視化・統制(Coupa株式会社

米Coupa(クーパ)は、企業の支出管理を行うサービス「BSM」のプラットフォーム 「Coupa(クーパ)」を提供しています。企業のあらゆる支出をクラウドで可視化・統制し、購買、経理財務、サプライチェーンのDXとコスト・業務最適化に貢献するソリューションです。サプライチェーンのデザインや購買・調達、支払、財務などの支出管理などの提供も可能です。今後は、大手グローバル企業を主要ターゲットとして事業拡大に力を入れていきます。

 

政府は起業支援に意欲的で、スタートアップへの投資額を10兆円規模に増やす5カ年計画を進めています。スタートアップは日本経済の持続的成長を担う主役として期待されているだけに、海外の情報を積極的に収集し取り入れて成長に結びつける戦略が、各スタートアップ企業に強く求められています。

 

▼テーマリーダーProfile

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

グローバル&インダストリー事業部

久保 凛太朗(くぼ・りんたろう)

元大手自動車メーカーのグローバル市場調査・商品企画担当。海外市場の顧客調査、新車の商品企画、将来需要予測などに従事。その後、大手金融系企業にて海外ベンチャー企業とのオープンイノベーションを立案・推進。インドのSaaSベンチャー企業と日本国内で新規事業を立ち上げ、マーケティング・インサイドセールス・営業組織構築、サービス開発、パートナー企業との交渉をリード。事業責任者として年間約5億円のリカーリング収益の創出と黒字化に貢献。デロイトトーマツベンチャーサポートに参画後は、大企業と海外・国内のベンチャー企業とのオープンイノベーション創出支援、新規事業の立ち上げを専門に従事。

プロジェクトマネージャーとして関与した代表案件
・大手通信会社とスタートアップ企業の協業プログラムの設計・運用支援
・大手自動車メーカーの北米新規事業における仮説検証支援
・大手専門商社の海外スタートアップ探索・協業支援
・大手化学メーカーの新規事業創出制度設計支援
・経済産業省主催 海外VCと国内ベンチャーのマッチングプログラム運営

 

~イノベーショントレンドを定期的にキャッチアップされたい方へ~

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