この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。
今回は、2022年9月15日に開催した「地域イノベーション特集」です。
地域イノベーションは既存の地域資源を生かして、新しい価値を生み出すことだと定義しています。具体的には地域のオリジナリティと住民の協力によって新しい需要・雇用を創出し、関係人口の増加につながるという持続的な循環が、地域の課題解決と魅力の創出、最大化をもたらす原動力となっています。
地域イノベーションが求められる理由は、地方の人口減少・高齢化問題が深刻化しているからです。
内閣府の調査によると、2018年時点で47都道府県のうち最も高齢化率が高いのは秋田県で36.4%。2045年には50.1%と2人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されています。他の都道府県も軒並み高齢化率が上昇し、東北全県をはじめ19の道県が40%を超える見通しです。
ただ、地方には自然や史跡に代表される豊富な観光資源があるほか、地域に根ざした特色のある産業があり、地域コミュニティも残っています。
潜在的な魅力・市場は大きいと思っています。こうした特性を生かした地域イノベーションの活性化に向け、京都と大阪、神戸の3都市を中心とする京阪神地区や福岡市などは、スタートアップ企業の成長を促す環境を国が整備する「スタートアップ・エコシステム グローバル拠点都市」に選ばれています。
また、新たな地域イノベーションを起こすには、多様な価値観を生み出す人材を輩出するとともに、さまざまなステークホルダーが組んで、地域の魅力を発信することが重要です。それには地域プレイヤーとスタートアップ、大企業が連携しあって、それぞれの課題を補っていく作業が不可欠となります。
三者による連携事例を紹介します。福岡県と佐賀県でスーパーマーケットや酒販店、飲食店などを展開する西鉄ストアは、運営する「にしてつストア」に、TOUCH TO GOが開発する無人決済システムを導入しました。同社の資本業務提携先である東芝テックの販売、導入、保守のサポートによって実現した次第です。
キッチン道具などのものづくりで有名な 新潟県燕市と、木工のまちとしても知られる新潟県加茂市は、YouTubeやTikTokをはじめとするインフルエンサーマーケティング事業を展開するBitStar、三菱地所とともにYouTubeとリアルイベントを掛け合わせた「ふるさと納税」のPR企画を実施しています。
今回は地域イノベーションに貢献する5社を紹介します。
Another works(アナザーワークス、東京都渋谷区)は、複業したい人と企業・自治体をつなぐSaaS型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を提供しています。現在力を入れているのは、行政課題を解決することで地方創生を目指す自治体へのサービス提供です。すでに50を超える自治体が導入。2500人以上がエントリーし、150人以上がボランティアで複業を行っています。石川県能登町で巨大イカのモニュメントによる経済効果が話題となりましたが、その経済効果を算出したアドバイザーが複業人材で登用されています。
picks design(ピックデザイン、名古屋市中村区)は、ECプラットフォーム「そのとちぎふと」を提供しています。ECサイトで商品を購入する際、ネットで調べても説明が複雑で購入しにくい点を踏まえ、文章を読まなくても、1分程度の短い動画で商品の魅力を訴求できるようにしています。動画でこだわりや製法を知ることができ、事業者のインタビューなどデジタルコンテンツを合わせて発信することで、ただ購入するのではなく、その事業者のファンを獲得することも可能です。
RelyonTrip(リリオントリップ、東京都国分寺市)は、Z世代向けの飲食・観光アプリ「sassy(サッシー)」を提供しています。10~20代は、カフェやスポットをインスタグラムの画像で探し、目的地まではグーグルマップを見ながら向かうパターンが一般的です。ただ、インスタグラムで探すのは、情報不足などの問題から調べ直しが発生してしまい「めんどくさい」と感じている人も少なくありません。sassyはいわば、瞬間計画アプリ。「今からどこに行く?」といった迷いを絶ちます。
scheme verge(スキームバージ、東京都文京区)は、エリアマネジメントを効率的かつ持続的に推進するためのプラットフォーム「Horai(ホーライ)エリアマネジメント」を提供しています。利用者の回遊を支援するアプリやウェブと、事業者向けのデータ管理画面で構成されています。観光地だけではなく複合商業施設や空港・港湾など、さまざまなロケーションで活用できる汎用性が特徴で、都市経営をデータ活用という観点からサポートします。
CiPPo(シッポ、兵庫県西宮市)は、「人材と消費、広告費を地域内で循環させる」をミッションに掲げ、地域プラットフォームアプリを提供しています。市民側は赤ちゃんとの同伴が可能な店など、探しだすのが難しい情報を入手できるほか、現在地から近い順で営業時間中の店を探し出せます。行政側は、災害防犯情報を海側や川沿いなどにいる人にだけプッシュ通知したり、電子回覧板、学校の連絡網、子供や高齢者の見守り機能などを提供できます。
人口減と高齢化が進む地方では、経済の持続可能性を高めることが課題となっています。地域プレイヤーと大企業を巻き込んだ、スタートアップ主体の地域イノベーションに期待が高まります。
▼テーマリーダーProfile
デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社
Next Core事業部
関 遼樹(せき・はるき)
2012年長野県庁入庁。地域防災・消防等や高齢者支援を担当し、2022年デロイト トーマツ ベンチャーサポートに長野県庁から出向。
Morning PitchやNEXs Tokyoなどの運営を担当
~イノベーショントレンドを定期的にキャッチアップされたい方へ~
—————————————————————————————————————————————-
Morning Pitchでは、上記のような各回テーマ概観の解説を
資料や動画にして有料会員様限定でお届けしています
解説資料・・・Morning Pitch有料会員
解説動画・・・Morning Pitch Innovation Community(MPIC)会員
—————————————————————————————————————————————-