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イノベーショントレンド

 

\イノベーショントレンド解説/

この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。

 

今回は、2022年9月8日に開催した「Web3(ウェブスリー)特集」です。

GAFAMと格差拡大への反発が原動力

Web3は、ブロックチェーン(分散台帳)を基盤にした分散型のオンラインエコシステムで、インターネットの一部を所有できるようになったWeb形態です。

 

1990年代から2000年代半ばにかけて普及してきたWeb1は、一方通行型のコミュニケーションで、一般ユーザーは閲覧を行えるだけでした。Web2はユーザーのデータや情報は全て企業が管理していましたが、双方向コミュニケーションが可能になり、大手プラットフォーム上にコンテンツを投稿できるようになりました。こうした技術が融合し、Web3へと発展していったのです。

Web3が広がっている理由は、米ハイテク大手5社「GAFAM(アルファベット、アップル、メタプラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトの総称)」の巨大化に伴う強まる個人情報統制と、資本主義による格差拡大への反発です。

根幹にあるブロックチェーン技術の発展も、大きな要因となっています。例えばデジタルコンテンツの持ち主を証明するNFT(非代替性トークン)技術は、実用化段階に移行。こうしたインフラの発達によって2020年以降は、分散型金融(DeFi)やゲームと金融を組み合わせたGameFi(ゲームファイ)など、さまざまなサービスが開発されています。

 

グローバル投資額は10年以内に10兆円超える見通し

Web3市場は拡大期にあります。2021年のグローバル投資額は3兆円と全体投資額の約5%に達しており、10年以内に10兆円を超えるとみられています。これに伴いユニコーン企業も増加。世界ではすでに、65社以上が誕生しています。そのうちの40社が2021年に設立されました。

 

Web3の特徴は(1)インターネットの分散性(2)誰もが平等に参加できる「パーミッションレス」(3)暗号通貨での決済(4)トラストレス(信用不要)な取引―です。これによってオンラインサービス上のアセットや個人データ、サービス自体についても、ユーザーがこれまでにない形で所有・利用できるようになりました。例えば、ゲーム内のアイテムを二次流通で販売してお金を稼ぐことが可能になり、サービスが消えてもその所有権を主張できます。

 

記事自体をNFT化、自由に価格をつけ販売・流通

Web3の代表的なサービス事例を紹介します。分散型ブログサービスの「Mirror(ミラー)」は、記事自体をNFT化することで著者が自由に価格をつけ、販売・流通させることができます。分散型Webブラウザの「brave(ブレイヴ)」は、広告を見ると閲覧者に報酬が仮想通貨で付与される仕組みを導入しています。2020年末の月間利用者数は2400万人でしたが21年末には5000万人を超え、1年で倍以上の規模に成長しました。

NFTの高額販売・落札も話題になりました。世界で最も有名なデジタル・アーティスト、Beeple(ビープル)の作品は約79憶円で販売され、Twitterの創設者による最初の投稿は、約3億円で落札されました。

 

ファンの応援活動をブロックチェーン上に記録する、推し活NFT

こうした動きを踏まえると、Web3はベンチャーだけでなく大企業こそ取り組むべき事業だと思います。企業による仮想通貨の保有が難しいなどの規制がありますが、一定規模のビジネスを創出できる可能性があるからです。

 

大企業の間では、Web3の企業やプロジェクトとの協業・投資が活発に行われています。大日本印刷とSUSHI TOP MARKETING(スシ トップ マーケティング)は、コンテンツ事業者とファンをつなぐ新サービスの創出に向けた共同研究に着手。アニメ・マンガ・ゲーム等の知的財産を主な対象とし、第一弾としてファンによる応援活動をブロックチェーン上に記録する「推し活NFT」のサービス開発をテーマに取り組みを始めました。サンリオはトークンエコノミー事業を手掛けているGaudiy(ガウディ)と資本業務提携。キャラクターを軸にしたコミュニティサービスを2023年前半に開始する計画です。

今回はWeb3マーケットの中から5社を紹介します。

 

メタバースの領域で実績残す(株式会社Minto

Minto(ミント、東京都港区)は、アニメ・漫画を活用したSNSマーケティングでトップの実績を誇るwwwaapと、キャラクタースタンプのダウンロードで世界1位の実績があり、NFT/メタバース領域でのIP(知的財産)プロデュースを行うクオンが経営統合し、2022年1月に生まれた企業です。日本のほか、上海とバンコク、ホーチミンで事業を展開しています。Web3メタバースの領域では、自社IPの進出や著名IPとの協業、企業の制作支援といった分野で実績を残しています。

 

ゲーム特化型のパブリックブロックチェーン(Oasys Pte. Ltd.

Oasys(オアシス)はゲーム特化型のパブリックブロックチェーン「Oasys」を提供しています。ブロックチェーンゲームの特徴・強みは、インセンティブをユーザーに与えることで、エンゲージメント高くゲームに参画できる点です。従来のゲームの定義を変える可能性があり、DeFiに並ぶポテンシャルがあります。大手ゲーム会社とプロジェクトを進めており、まずは10のタイトルをリリースする予定です。

 

国内最高水準のNFTインフラサービスを提供(モノバンドル株式会社

モノバンドル(東京都千代田区)は、国内最高水準のNFTインフラサービス「Hokusai」を提供しており、NFT発行者は暗号資産なしに対応することが可能です。一方、エンドユーザーは、メタマスクなどの外部ウォレットが不要でNFTの売買・二次流通を行えます。対応しているブロックチェーンの数は国内最多の6つ。今後は、NFTのインフラとしてだけではなく、NFTが介在するあらゆる市場に最適化されたサービスを展開していきます。

 

価格変動を抑えた日本円ステーブルコインを提供(JPYC株式会社

JPYC(東京都千代田区)は、ブロックチェーンの技術を使いながら価格変動を抑える仕組みの日本円ステーブルコイン(法定通貨と連動する仮想通貨)「JPYC(JPYコイン) 」を提供しています。日本円に連動したステーブルコインとして99%以上のシェアを占めています。岡部典孝代表取締役は連続起業家で、東京・青ヶ島に移住して漁師見習いとしても活動しています。日本のエネルギー自給率・食料自給率の問題などをWeb3×海業という産業から解決します。

 

音声や印刷などを使ってNFTを簡単に配布(SUSHI TOP MARKETING 株式会社

SUSHI TOP MARKETING (東京都千代田区)は、音声や印刷などを使ってNFTを簡単に配布する「NFT TOP SHOT」を提供します。QRコード、音声、印刷によってスマホさえあれば対応できるサービスで、大企業との連携や技術的な面で優位性があります。今後はNFTの広告・マーケティング事業に特化して事業を展開。現在、渋谷、丸の内などに常設のNFT配布ポートを設置し、大手企業と共同で、リアル空間での配布を行う構想を進めています。

 

Web1~2のインターネットの世界は順次、Web3の世界に置き換わっていくとみられます。ただ現在の日本の法制度や税制が、実情に合っておらず、この問題を放置したままでは海外に優秀な人材が流出する恐れがあります。スタートアップと大企業との連携を核にしたWeb3市場の拡大を図るためにも、Web3時代に適合した法制度を早急に整備する必要があります。

 

▼テーマリーダーProfile

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

イノベーションソリューション事業部

中静 奎太(なかしず・けいた)

慶應義塾大学経済学部卒。学生時代にC向けアプリケーションの開発・運営経験有り。「Web3×就活」プロジェクト立ち上げの一人として従事した後、NFT発行サービスを開発。デロイト トーマツ ベンチャーサポート入社後は、Web3スタートアップ支援・CVC設立/DD支援を担当。

 

~イノベーショントレンドを定期的にキャッチアップされたい方へ~

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