心停止などの重症患者に一次救命処置ができない課題を解決
緊急情報を周囲の救命知識のある方に通知する緊急共助ネットワーク「Coaido(コエイド)」
Coaido株式会社は救急車到着前の一次救命処置の実施率を上げて、救命率を劇的に高める緊急情報共有アプリ「Coaido(コエイド)119」を開発している。
自宅で家族が突然意識を失い倒れる場面を想像してほしい。すぐに落ち着いて対処ができるという人は少ないだろう。実は、何らかの原因で心停止した場合でも、すぐに心臓マッサージを行い、AEDで電気ショックを行えば救命率は89%まで向上できるという調査結果がある。それにもかかわらず、家族が救命処置に精通していなかったり、近所に医療知識のある人がいたとしても彼らに助けを求めることが困難なために、救急車が到着するまで何も処置ができないケースが多い。現状、自宅で心停止を起こし倒れた家族が助かる可能性はたったの3%しかないのだ。
また、心停止の際には心臓マッサージ に加え、AEDで電気ショックを与える必要もある。日本のAED設置密度は世界最高水準で、街中のいたるところに設置されている。しかし、これが効果的に活用できているかというと決してそうではなく、AEDが心停止発生現場に届く割合はたったの7%しかないのだ。その結果、突然の心停止で亡くなる人の数は 年間7万5000人、1日平均200人ほどにも達しており、大きな社会問題となっている。
そこでCoaidoはこの課題を解決すべく①救急車を呼ぶこと、②近辺の救命ボランティアへのSOS発信、③近辺のAED設置施設への連絡が同時にできる緊急情報共有アプリCoaido119を開発している。
Coaid119をもしもの時に備えてダウンロードしておけば、身の回りで誰かが突然倒れたときに適切に対処できる可能性が高まる。まず倒れるのを目撃した人が、アプリで救急車を呼ぶ。そうすると現場近辺の医療知識のある救命ボランティアにも自動でSOS通知が届く。地図のナビゲーションやユーザとのチャットを活用することで、救命ボランティアは現場に迷うことなく駆け付けることが可能だ。また通報者が救命ボランティアに現場の映像を送ることもできるため、通報者に医療知識がなくても患者の状態を正確に伝え、救命ボランティアが到着するまでの指示を仰ぐこともできる。
またアプリで119発信がされると、即座にCoaidoのサーバーから現場付近のAED設置施設に自動で電話がかかるため、設置施設から最短でAEDを現場に届けることができる。
つまりCoaido119を利用すれば、救急車だけでなく、周囲の救命ボランティアやAED設置施設などに心停止が近辺で発生していることを知らせ、素早い対応を促すことが可能となっているのだ。これによって迅速に一次処置が受けられるようになるため、多くの命を救える可能性が高まるのである。
これまで地方都市で実証実験を行う中で得た知見より、試行錯誤を重ねてこのシステムの実装にたどり着いた。Coaido119アプリはまずは人口密度が日本一高い東京都豊島区をターゲットに、区内限定で使用できるアプリとして、2017年6月より無料で提供していく予定だ。豊島区でのアプリ実装による救命率向上プロジェクトには、理念に共感した地場企業や大企業が協力の名乗りを上げている。そして今後、より課題が深刻な場所の解決において取り組んでいくのが、①Coaidoシステムのマンションへの導入、②CoaidoとIoT機器の連携だ。
①心停止の約7割が自宅で発生しており、その場合の救命率は先ほど挙げたように非常に低い。自宅が高層マンションの場合はさらに危険で、25階以上に住んでいる方が自宅で倒れた際に、助かる可能性は0%だったという調査結果が出ている。これは救急隊が到着してから上階に到着するまでに時間がかかり救命処置が遅くなるためだ。
このように高層マンションは緊急時には非常に危険な場所となっている一方、Coaidoのシステムを導入することでこの課題を解決できる可能性も実は非常に高い。なぜなら、24時間常駐している管理人を含め人が密集して住んでおり、情報共有さえ上手く迅速にできれば救命ボランティアがすぐに駆けつけられるからである。そこでまずは、マンションのディベロッパーや不動産管理会社と協力し、Coaidoのシステムをマンションに導入した際のモデルケースの構築に取り組み始めている。
②近年増加している単身世帯で心停止が起きた場合、本人はすぐに意識を失ってしまうため、発見してくれる人がいないとそのまま亡くなってしまう。そこで IoTデバイスとの連携によるCoaido119の自動化に取り組んでいる。これはバイタルデータや活動データの異常をウェアラブル端末や、スマートホーム機器などが検知することで実現できると考えている。
Coaidoは緊急時に助け合えるネットワークを構築し、それをIoT機器や他社サービスと連携し最大限に活用することで、救えるはずの命を救える社会の実現を目指していく。
Coaido株式会社 代表取締役 玄正 慎 氏
横浜市立大学卒業。ヨコハマ経済新聞記者、ビジネス誌フリーライター、不動産会社勤務を経て、2009年よりiPhoneアプリプランナーとして活動する。2010年にリリースした「就活ES実例」は就活生の定番アプリに。ハッカソンでAED活用率向上アプリ「AED SOS」を発案したことをきっかけに、2014年にCoaido株式会社を創業。ITを利用して、心停止者救命の社会課題の解決に取り組む。
(Coaido HPより引用)