純民間月面探査ロボットで宇宙資源開発「HAKUTO」
株式会社ispaceは、民間組織が月面無人探査の技術を競う、優勝賞金2,000万ドルの宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE」に日本で唯一挑戦するチーム「HAKUTO」を運営している。このレースで課されているミッションは、民間で月面探査ロボットを開発し、月面を500メートル以上走らせ、そして撮影した動画を地球に送信することだ。ispaceは総重量4キログラムと世界最軽量の超小型ロボットを開発しており、このような小さいロボットは日本の得意な小型化技術も用いて実現している。ispaceは中間賞でTop5の技術力を持つチームに選ばれ、2017年末の打ち上げを目指して引き続き開発に取り組んでいる。
このレースはispaceにとって通過点であり、将来的には我々のビジョンである「Expand our planet. Expand our future.」の下、人類が宇宙に生活圏を築くというミッションを実現したい。実現のためには宇宙に経済をつくっていく必要があるが、その際重要となるのが宇宙の資源開発である。我々は豊富な水が埋蔵されている月でこの資源開発を進めていこうと考えている。水は水素と酸素に分けることで燃料として活用でき、燃料ステーションを宇宙に作れば、宇宙活動拡大により増加する燃料ニーズに応えることができる。
宇宙資源開発は世界中で実現に向けて取り組みが進んでいる。2015年末にはアメリカで宇宙の資源所有権を認める法律ができたり、ルクセンブルクの政府も宇宙資源開発に注力をしていくことを発表している。またアメリカを中心に宇宙ベンチャーの動きも盛んで、トータルで100億円ほどの資金調達も実現している。もちろんベンチャーのみならず、航空宇宙機器開発の大手企業も宇宙資源開発に取り組んでいる。
日本も、はやぶさ探査機などの開発・打ち上げを経験し、宇宙資源開発に関する技術は蓄積されてきている。しかし関連法の整備や事業化などがあまり進んでおらず、このままでは日本が世界に遅れをとる可能性も否めない。そうならないためにも日本のispaceがこの業界を引っ張っていきたい。
宇宙の資源開発は、今後15〜20年という長いスパン取り組んでいくものであるため、段階を踏む必要がある。
第1フェーズは「Google Lunar XPRIZE」の超小型ロボットの実証実験で、ロボットにau等の企業広告を載せる広告事業を展開している。第2フェーズは月面への輸送システムを構築し、物資輸送ビジネスを展開する。同時に、月の資源をマッピングして、重要資源の特定をしていきたい。第3フェーズでは宇宙の資源開発が始まる。資源の採掘、加工を経て、月面や宇宙の顧客への提供をしていくが、ここには日本の建設会社や日本の優れた技術を取り入れて事業を進めていきたい。芽吹くのに時間のかかる産業だからこそ、ispaceは今から取り掛かっていく。