モーニングピッチ

協業事例

 

\協業事例インタビュー第五弾/

株式会社セブン銀行×SUSHI TOP MARKETING株式会社

きっかけとなったMorning Pitch

202298Web3特集

協業事例カテゴリー

業務提携・資本提携

はじめに

Morning Pitchは登壇スタートアップと大企業との協業促進に力を入れており、M&Aや資金調達、事業提携といった領域で成果を残しています。「協業事例インタビュー」では、スタートアップと大企業の担当者に登場していただき、どういった思いや交渉を踏まえ、協業に至ったのかについて紹介します。

第5回目は株式会社セブン銀行(以下、セブン銀行)とSUSHI TOP MARKETING(スシトップマーケティング株式会社)(以下、SUSHI TOP)です。セブン銀行は2018年からMorning Pitchの有料会員としてご活用いただいており、SUSHI TOPはNFTを活用したマーケティング支援会社として、2022年9月8日のWeb3特集に登壇しました。

株式会社セブン銀行

株式会社セブン銀行 セブン・ラボ 調査役 山方 大輝 (やまがた だいき)氏

2014年にSMBC日興証券株式会社入社。主にリテール部門でのセールス、金融市場の調査業務、マーケティング業務に従事。
その後、2020年にセブン銀行入社。現在はセブン・ラボの一員としてスタートアップをはじめ各企業とのオープンイノベーションによる事業創造や出資実務を担当。

SUSHI TOP MARKETING株式会社

SUSHI TOP MARKETING 株式会社 代表取締役 CEO 徳永 大輔 (とくなが だいすけ)氏

大阪府吹⽥市⽣まれ。⽴命館⼤学卒業、新卒で「⼭と渓⾕社」に⼊社。
インプレスホールディングスの⼦会社「天夢⼈」で書籍プロデューサーを経て、メディア事業で独立し事業売却を経験。2021年にユーザーが保有しているNFTの種類などを踏まえた「トークングラフマーケティング」の⽂化創造を⽬指すSUSHI TOP MARKETINGを創業。

【インタビュアー】

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 ビジネスプロデュース事業部 プラットフォームユニット Morning Pitchチーム 藤野 菜々歩

国際教養大学 国際教養学部卒。大学入学前、在学中よりオンライン英会話大手企業や資産運用会社にてインターンを経験。その後スタートアップ業界とその支援に興味を持ち2022年デロイト トーマツ ベンチャーサポート入社。大型のグローバルイベントの運営やスタートアップの海外展開支援事業に従事し、2024年6月よりMorning Pitchの運営にフルタイムで関与。

 

 

3度の協業を実現。新たなマーケティングソリューションを金融機関とスタートアップが創出

2023年7月、セブン銀行とSUSHI TOP はセブン銀行のATMから募金をした方にNFTアートを配布する取り組みを開始しました。

翌年の10月にはセブン銀行がSUSHI TOPに出資して連携を加速。さらに今年の9月からは他社のマーケティング支援を行うプロジェクトを始動するなど、セブン銀行はATMを通じた新しい顧客接点を創出しています。一方でSUSHI TOPはNFTを活用した新たなマーケティングソリューションを提供しています。

今回お話を聞いたセブン銀行の山方さんとSUSHI TOP の徳永さんには、Morning Pitchがプラチナスポンサーとして参画したIVS2025でも出会いから協業までのストーリーをテーマにセッションいただきました。

IVS2025にてMorning Pitchブース内セッションの様子(2025年7月2日)

この記事では両社の今日までの協業の取り組みをインタビュー形式で深堀りします。

▼詳しいリリース・サイトこちら▼
2023年7月 アライアンス
セブン銀行ATMNFT募金キャンペーン

2024年10月 ファイナンス
NFTマーケティング特化企業スシトップマーケティング、セブン銀行を新たな株主に迎えシリーズAを1.3 億円でクローズ

2025年9月 アライアンス

リリースはこちら

Morning Pitch Web3特集で欲しかったピースが見つかる。双方からすぐに話し合いへ。

藤野:両社の出会いを教えてください。

山方:Morning Pitchには毎週欠かさず出席しており、2022年9月のWeb3特集の登壇企業も事前に調べていました。その8月ごろにセブン銀行のATMからNFTを配る施策を検討中であり、それに対応できる事業者を探していました。SUSHI TOPのピッチを見て、保有技術が配布事業で欲しかったピースであったため、すぐに連絡しようと思いました。

Morning Pitch Web3特集登壇時(この回はフルリモートでした)(2022年9月8日)

徳永:ピッチ後にネットワーキングフォームに回答いただいたセブン銀行へこちらからすぐにご挨拶のメールを送り、10月3日に打ち合わせとなり協業に向けた話し合いが始まりました。想像以上のスピード感でした。

藤野:SUSHI TOPが先に連絡をしたが、ニーズとしてはセブン銀行にあったということですね。

募金をしてセブン銀行のATMからNFTをゲット。業務提携から資本提携へ急加速。

山方:協業の第一弾として2023年の7月から10月までの3か月間、ATMで募金をした方にノベルティとして4種類のNFTの配布する「NFT募金」プロジェクトを行いました。NFTは当時、暗号資産という整理がなされていた時期でしたが、譲渡できないNFT(SBT=ソウルバンドトークン)の技術を採用しSUSHI TOPに実装してもらいました。結果は通常のATM募金と比べて件数は3倍、金額は6倍。大変好評なプロジェクトになりました。

徳永:セブン銀行という大企業側がやりたいことが明確にあったので、とても進めやすかったです。一方で我々の技術仕様の部分だけではなく、利用規約を一緒に作っていったことも思い出深いです。

藤野:その後、資本提携に至った経緯は。

山方:2023年の年末ごろのNFT募金について取り上げてもらったテレビ東京の番組収録の帰りに、徳永さんから資本提携の依頼を受けました。その後、セブン銀行の幹部と協議をし、実際に資本を入れることとなりました。

徳永:当時はシリーズAのラウンドで、3回に区切ってCVCを中心に調達を進めていこうと考えていました。セブン銀行は協業もしているので、可能性があるかなと思い、思い切ってお声掛けをした次第です。2024年10月に実際に投資実行いただきましたので、大体1年周期で出会い→業務提携→資本提携と進んできました。

そして資本提携の1年後である今回また新たなプロジェクトが始動する。

藤野:今年9月からスタートしたプロジェクトの概要を教えてください。

山方:一言で言えば、これまでのNFT募金の仕組みをさらに横展開し、配布したNFTを用いて他社のマーケティング支援を行います。第一弾は東急電鉄と企画したデジタルスタンプラリーです。セブン銀行のATMで交通系ICカードのチャージを行い、電車に乗って特定の施設を訪問し、それぞれの施設でNFTを受け取る仕組みとなっています。これらを順不同ですべて達成いただいた方には豪華な景品を指し上げます。(詳細は下記画像)

徳永:SUSHI TOPとして、投資家であるセブン銀行と我々のもともとのクライアントである東急電鉄がコラボすることは大変意味があることだと認識しています。今までの「ATM×募金」はビジネスにしづらいですが、他の地域通貨や地域の電子マネーにも応用できる交通系ICカードのチャージを行うことでNFTを取得できるようになったため、同じ仕組みを各地域で展開することが可能になります。

景品にも工夫を凝らしています。3D車両NFTは、SUSHI TOPと東急電鉄が共同で開発したデジタル空間で使えるため、セブン銀行との協業の中に組み込むことができました。セブンプレミアムお茶ギフト券についてはセブン-イレブンからの提供です。そして東急1日乗車券ワンデーパスは、NFTを保有することで電車のデジタル切符がもらえるという、新たなユースケースを生み出しました。これらの取り組みは、消費者の移動や購買などの行動データが、個人情報を取得することなく、可視化できることにつながります。

藤野:NFTがセブン銀行、東急電鉄双方にとってこれまで取り切れなかったデータを可視化する新たなマーケティング施策になったのですね。

利用前後の行動を把握できるようになり、他社との連携も進む

山方:ATMは年間に累計で10億件ほど使われており、電子マネーの取引も月次報告によると東京神奈川だけでも100万件を超えます。東急電鉄とのATMを活用したNFTスタンプラリーの共催は、広告媒体としてリッチな参加者数を獲得できるため、他の施策に比べより多くの価値を提供することが可能です。この購買や移動のデータは東急電鉄とセブン銀行にとって共同のマーケティング資産となり、ATMの利用前後の行動を把握できるようになります。このビジネスモデルは東急電鉄以外の企業と組んで展開でき、これがSUSHI TOPと資本提携に踏み切った大きな理由です。

今回の仕組みを活用すれば、さまざまなサービスを展開できるようになります。例えば電子マネーをチャージしてもらいコンビニの商品を購入いただく。そのレシートなどを読み込んで条件を達成した人には、NFTや試供品を渡す。そんな取り組みも可能です。

徳永:大手のメーカーは小売りの介在によって、自社商品の購買行動の情報を収集できなくなります。そこをセブン銀行というコンビニの中にあるATMを活用しNFTで個人情報を取らずトラッキングできるようになり、マーケティングの新しいチャネルになることが期待できます。NFTを利用することでCDP(顧客データプラットフォーム)の管理コストも大幅に削減できます。SUSHI TOP としてはこの管理コスト削減についても消費者に対する価値提供の一つになり得るため可能性を感じています。

山方:徳永さんとよく、「何年後かには『NFT』という言葉を使うのを辞めよう」と話しています。プログラム言語や拡張子のようにマーケティングソリューションの1つで、その裏側がどうやら「NFT」らしいといった程度に理解が浸透していけば良いなと思います。

藤野:デジタルマーケティング業界に新たな歴史を作る第一歩ですね。

ブロックチェーンは既存のシステムをアップデートする要素。金融機関と非金融機関のスタートアップが描く未来

藤野:今後についての意気込みやPRをお願いいたします。

徳永:ブロックチェーンは金融のイメージが強いですが、我々は非金融領域でのブロックチェーン活用のトップランナーを目指しています。クリス・ディクソン著「Read Write Own」という書籍では、秀逸な例えが使われています。従来のwebやデータベースを木材に例えるなら、ブロックチェーンは鋼材であると言えます。木材でも鋼でも家は建てられますが、より堅牢で強固な建築をすることができます。SUSHI TOPはデジタルマーケティングの領域で、ブロックチェーンという「鋼材」を用いて新たな価値創出を目指す企業です。

従来のRDBなどをブロックチェーンに置き換えることによって、「個人情報レス」「異次元の低コストでのデータ保持」など企業と個人のコミュニケーションをより良くする価値を提供します。また、我々のようなデジタルマーケティング領域でのブロックチェーン活用では、グローバルでも日本がかなりリードしています。海外では、NFTと証券の境界が曖昧ですが、日本では経産省の明確なガイドラインが早期から整備されていたためです。

GAFAMのプラットフォームに依存した日本は「デジタル小作人」と揶揄されますが、我々が取り組む「非金融領域でのブロックチェーン活用」はプラットフォーマーに依存せず、日本が世界でイニシアティブをとっていく可能性のある技術だと思っています。

山方:ブロックチェーンから生まれてきている技術は金融的な価値と非金融的な価値があると思います。今の日本にとっては非金融の価値の方が圧倒的に奥行きがあると感じています。そうした環境の下、金融機関と非金融機関のスタートアップが連携しながら今の金融のメインストリームとは違う方向で、Web3初の技術を社会実装していくチャレンジをしていると思います。まずは一歩ずつ同様の施策を生み出し続けていきたいです。これによってセブン銀行のパーパスである「お客さまの『あったらいいな』を超えて、日常の未来を生みだし続ける。」を体現できることを願っています。

セブン銀行ATMと共に(徳永さん、山方さん)

インタビュアーコメント

両社の協業はデジタルマーケティングに新たな可能性を見出すものとなりました。大企業側が金融機関という範疇にとどまらない、新しい非金融の価値を追い求め、それにスタートアップも参画して共に押し進める形となりました。セブン銀行は最初のNFT募金プロジェクトから確実に次の協業に向けて出資も行い、さらに第三者も巻き込んだ形で新たな顧客接点の創出を行いました。SUSH TOP MARKETINGも単なるNFTの技術提供だけにとどまらず、デジタルマーケティング業界に新しい手段と価値の創出を行っています。いつかNFTという言葉を使わず、その裏では当たり前のようにNFTの技術が活躍している。そんな未来が到来することを楽しみにしています。

Morning Pitchでは毎週木曜朝7時からピッチイベントを開催し、オーディエンスとスタートアップとのネットワーキングから多くの協業が生まれています。皆様のご参加をお待ちしております。

協業報告フォーム

Morning Pitch事務局では、これまでにMorning Pitchご参加後の登壇スタートアップ様とオーディエンスの皆様との協業の事例を調査しております。

Morning Pitchがきっかけの事業提携、資金調達、資本業務提携、実証実験等がございましたら、協業報告フォームにてぜひご共有ください。

※協業された両社のご希望があれば、Morning PitchのHPにて協業事例としてご紹介させていただきますので、貴社の取り組みPRとしても活用いただけます。
※ご回答内容は事前の許可なしに公開されることはございません。

▼協業報告フォームはこちら▼
https://forms.office.com/Pages/ResponsePage.aspx?id=8UXaNizdH02vE1q-RrmZIS5vr_J599BCkTD5lDwBhJ1UMVhXS09HRzVJODNQSVpGU00xSTBCOE5GUS4u