Morning Pitchは登壇スタートアップと大企業との協業促進に力を入れており、M&Aや資金調達、事業提携といった領域で成果を残しています。「協業事例インタビュー」では、スタートアップと大企業の担当者に登場していただき、どういった思いや交渉を踏まえ、協業に至ったのかについて紹介します。
第3回目はサンフロンティア不動産株式会社とモノバンドル株式会社です。サンフロンティア不動産は、Morning Pitchの有料会員で、毎週開催のMorning Pitchには頻繁に大手町の会場へお越しいただくなど積極的に活用されています。モノバンドルは2022年9月8日のweb3特集に登壇した、ブロックチェーンをはじめとし最先端技術を用いた製品やサービスを提供するカンパニーです。
サンフロンティア不動産株式会社
DX事業部
塩澤 宏敏
マンションディベロッパーにて営業職、2011年よりサンフロンティア不動産にてリーシングマネジメント業務に従事。マネージャーとして新店舗立ち上げ、複数店舗のマネジメントを経験。現在はDX事業部にて、社内DX化、データマネジメント推進、スタートアップ企業とのオープンイノベーション、新規事業に従事。
モノバンドル株式会社 代表取締役 / Monobundle Netherlands B.V CEO
原沢 陽水
日本初の日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を取り扱う JPYC 株式会社に立ち上げ期から参画し、COO として事業成長を牽引。2021年6月にモノバンドル株式会社を設立。事業者向けのNFT総合インフラサービス「Hokusai」、デジタル資産の監査・認証プロバイダー事業「SuperAudit」など5つの事業をリリースし、ブロックチェーン領域のマルチプロダクトカンパニーとして事業を展開している。
デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 イノベーションソリューション事業部
柳澤 紘輝
慶應義塾大学 経済学部卒。大学在学時に、大企業向けにSaaSプロダクトを提供するベンチャー企業にてカスタマーサクセスを担当。プロダクト導入時のKPI設定からトラッキング、レポーティングまで一貫して支援業務に携わった後、当社へ入社。大企業の投資実行支援や社内スタートアップの資本政策調査、ピッチイベント運営に従事。
サンフロンティア不動産株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:齋藤 清一)とブロックチェーンをはじめとした最先端技術を用いた製品を開発する、マルチプロダクトカンパニーであるモノバンドル株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:原沢 陽水)は、業務提携を締結しました。両社は、「不動産領域×web3」をテーマに、不動産業界におけるNFT(非代替性トークン)とブロックチェーン技術の活用を促進しており、施策第一弾として、web3特化型コワーキングスペース「Centrum(セントラム)」を、サンフロンティア不動産運営のスタートアップ支援オフィス「A SHIBUYA(エー シブヤ)」(東京都渋谷区神南・東急渋谷駅前ビル4F)にて、今夏オープン予定です。
サンフロンティア不動産は、東京都心部の中規模オフィスビルに特化して不動産再生事業や不動産サービス事業を展開しています。2023年には、「START-UP FRONTIER TOKYO」プロジェクトを始動させるなど、スタートアップ支援や自社のオープンイノベーションにも注力されています。
モノバンドルは2021年の創業より、ブロックチェーン技術を軸としたサービスを展開し、事業者向けNFT開発インフラであるHokusaiをはじめとし、デジタル資産の監査事業のSuperAuditなどを提供されています。
そして今回両社は、文化的資産の豊かな渋谷の駅前において、web3領域でのアジアのハブとなるweb3特化型のコワーキングスペースをオープンします。不動産(コワーキングスペース)の活用にとどまらず、空間としての価値向上やコミュニティとしての流動性を高めるため、アンバサダーやパートナー、スポンサー企業と共に、「Centrum」に入居するweb3関連のスタートアップ企業や関係企業に、NFTおよびブロックチェーン技術を起点としたweb3関連のスタートアップコミュニティへの体験を提供していく予定です。
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サンフロンティア web3特化型コワーキングスペース『Centrum』今夏オープン
▲web3特化型コワーキングスペース「Centrum(セントラム)」
2022年9月のMorning Pitch web3 特集に参加させていただいたのですが、当時からweb3の領域には注目しておりました。私が所属しているチームではDX推進に加え、スタートアップ企業とのオープンイノベーションについても取り組んでおり、web3の基盤の技術であるブロックチェーンを活用した協業チャンスを探しておりました。自社の事業領域である不動産の流動性の低さという課題に対し、モノバンドルの「価値の流動性を、人類史上最も高める」というミッションに強く共感し、私からミーティングを提案させていただいたのが初めのコンタクトの経緯だったと思います。
弊社としても、リアルアセットとの連携の観点では、不動産が最も親和性があると考えており、実際に複数の不動産業界の企業とお話しさせていただく機会もありました。Morning Pitch登壇させていただいた後、サンフロンティア不動産の塩澤さんからお声掛けをいただきました。塩澤さんは、資産の流動性を高めることによる収益性の向上、流動性を持ったweb3領域での新規事業の可能性など、より具体的にイメージをされており、初回から話が合いました。
▲当日のピッチの様子。原沢様はオランダよりリモートでご登壇
当初から、両社とも具体的な協業イメージをお持ちだったのですね。初回のミーティング以降は、協業に向けてどのように進めていかれたのでしょうか。
翌週には他の社員も含め2回目のミーティングを実施しました。以降は週次で定例ミーティングを実施し、プロジェクトとして話を進めていきました。
2回目のミーティングでは、弊社から具体的な協業オプションについて、いくつかご提案させていただきました。そのうえで、各オプションに対する懸念点や実現可能性について、塩澤さんからフィードバックをいただいたと記憶しています。
早期の段階から具体的な提案をされたのですね。今夏に協業の第一弾としてオープンする「Centrum」に至るまではどのようなプロセスだったのでしょうか。
当初は、弊社のHokusai(NFTのインフラストラクチャーサービス)を活用して、不動産の流動化に関するサービスを検討しておりましたが、国内においては法的な整備が進んでいないなど、実現可能性の観点で問題がありました。そのような中、サンフロンティア不動産から、渋谷に良いスペースがあるとのご提案をいただきました。web3領域の人達が集えるリアルなスペースの需要は、ブロックチェーン業界に5年以上いる中で、前々から強く感じていたので、弊社の国内外でのネットワークも活用することで、アジアのハブとなるようなコアーキングスペースを作れる可能性があると思い、協業の第一弾として進めさせていただいた次第です。
不動産というリアルアセットを持ち、空間の価値を高められる点が弊社最大のケイパビリティであると認識しており、ご提案させていただきました。また、弊社としましても国策でもあるweb3産業を盛り上げるため、国内外のプレーヤーの方々が集うスペース・コミュニティを創造できる良い機会だと思い、具体的な協業へと繋がりました。
実現可能性の観点と、両社のケイパビリティ活用の2点から、今回の「Centrum」にたどり着いたわけですね。4月に事業提携を発表されていますが、どのようなタイムスケジュールで提携発表まで至ったのでしょうか。
事業提携の発表は4月でしたが、提携の契約自体は、2月頃には完了しておりました。また具体的な事業計画は、昨年12月の時点で弊社内における承認を得ていました。
▲「Centrum(セントラム)」の様子
2回目のミーティングの際から、塩澤さんが社内の他の方を巻き込んでくださった点が大きいと思います。
具体的にどのような方々を巻き込んでいかれたのでしょうか。
社内的な承認を得た12月までに複数の方を巻き込み協業を進めてまいりました。まず、本プロジェクトの対象となる施設の管轄者には早めに企画を共有し、理解が深まるようにし、加えてスタートアップ支援担当者にも共有し、本プロジェクトがDX事業部としての取り組みだけでなく、スタートアップ支援の文脈でも意味のあるものだと伝えることで、協力を仰ぎました。経営企画のメンバーやグループマーケティング本部にも意義を共有し、本プロジェクトの組織的な位置づけを共に整理しながら進めていくことに留意していました。
社内の方を巻き込んでいただいたことに加え、プレスリリースを出す際にも感じたことなのですが、サンフロンティア不動産は決定と物事が進むスピードがスタートアップ並みの速さです。そのうえガバナンスもしっかりされていたため、スムーズに協業が進んだと考えています。
ありがとうございます。お互いスピード感のある動きができていたと思います。原沢さんが「Centrum」のホームページを2日ほどで作られた時にはその集中力に驚きました。意思決定はもちろんですが、そういった技術的な点も含め、スピード感をもって進めてくださったと考えています。
弊社は、不動産を中心に事業展開をしておりますので、「web3」領域のブロックチェーン、NFTなどテクノロジーに対する理解度は決して高くありません。「協業で何をしようとしているのか」や「中長期的な展望」など、事業の意義や目的を理解いただくために時間を掛けて熟慮する必要はありました。
弊社にかかわらず業界における勝ちパターンが決まっていないため、具体的に、どのような座組やプランであれば、協業してくださる企業様のためになるかを常に意識しています。特にweb3はどうしても、ある種、色物として見られてしまう傾向があります。だからこそ、双方の長期的な事業性や収益性、ビジネス上のメリットを実現できるアイデアを提案することが重要だと思います。
自社の業界とは異なるという前提に立ち、協業先の業界、今回であればweb3について、商慣習や価値観・人々のネットワークなどを理解することが、最初のステップだと思います。特に、自社の事業ドメインとギャップが大きい場合には、社内の理解を得るために、当該業界に理解のある社員を巻き込みながら進めることが重要だと考えています。
▲「Centrum(セントラム)」のアンバサダーに任命された皆様
モノバンドルとの協業第一弾として、今回「Centrum」というweb3に特化したコワーキングスペースをオープンさせていただきます。web3 領域でのアジアのハブとなる場所を目指しておりますので、国内外、スタートアップ、大企業など是非、多くの方にご利用をいただけますと幸いです。
第一弾としての「Centrum」は、弊社のweb3領域におけるネットワークと、サンフロンティアの不動産アセットを活用した事業提携となっております。今後は、弊社のNFT技術を活用した不動産の価値の流動化など、先進的な事例を引き続き共創できるよう、進めてまいります。
Morning Pitchでは登壇される企業様のピッチ内容が練りこまれており、他のピッチに比べても質が高いと感じております。スタートアップに対する理解が深まるため、具体的な協業をイメージしやすくなると思います。
今まで登壇したピッチイベントの中で、登壇後、最も反応が良かったのがMorning Pitchでした。オーディエンスの大企業の方々は、協業できそうな領域や抱いている課題が明確であるため、最初のコミュニケーションコストが低いことはMorning Pitchならではの特徴だと思います。また機会があればぜひ登壇させていただきたいと考えております。
今回の協業のポイントは、圧倒的なスピードでした。Morning Pitchでの登壇後すぐに初回のミーティングを実施し翌週には2回目のミーティング、そして以降の定例化と、迅速に協業を進めていきました。スタートアップ側は、2回目のミーティング時には、協業の可能性について具体的に方法を提示するなど、早期から具体性を持って動かれていたことが素早い事業提携につながったようです。また、大企業側も、社内の承認を得るために早い時期から他部署の方を巻き込むことで、組織内での軋轢を生むことなくスムーズな承認を実現できました。
Morning Pitch事務局では、これまでにMorning Pitchご参加後の登壇スタートアップ様とオーディエンスの皆様との協業の事例を調査しております。
Morning Pitchがきっかけの事業提携、資金調達、資本業務提携、実証実験等がございましたら、協業報告フォームにてぜひご共有ください。
※協業された両社のご希望があれば、Morning PitchのHPにて協業事例としてご紹介させていただきますので、貴社の取り組みPRとしても活用いただけます。
※ご回答内容は事前の許可なしに公開されることはございません。
▼協業報告フォームはこちら▼
https://forms.office.com/Pages/ResponsePage.aspx?id=8UXaNizdH02vE1q-RrmZIS5vr_J599BCkTD5lDwBhJ1UMVhXS09HRzVJODNQSVpGU00xSTBCOE5GUS4u