モーニングピッチ

イノベーショントレンド

 

\イノベーショントレンド解説/

この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。

今回は、9月14日に開催した「ゲーム特集」です。

モバイルゲームはゲーム市場の半分を占める

経済産業省によると2023年のゲーム市場はグローバルベースで23兆円、国内は約2兆8000億円規模になるとみられています。日本のコンテンツ市場の中では、映像、出版に続く規模で、全体の21%を占める産業となっています。

世界市場は2022年度に一時、売り上げが減少したものの、全体としては上昇基調を維持しています。特に20年度は、コロナ禍の影響でゲームソフト需要が拡大。前年度比で23%増となりました。18年度は国内メーカーの家庭用ゲーム機器が爆発的な売れ行きを示し、31%の伸びを示しました。

22年度に減少した理由としては、製造工場の一時閉鎖に伴うゲームソフトの発売延期や、一部の原材料のコスト上昇などが挙げられます。

こうした中、モバイルゲームは、スマートフォンの普及率の上昇に支えられて近年は大きく売り上げを伸ばしており、22年にはゲーム市場の半分を占めるようになりました。ゲームソフトについては、ユーザー数が数億人にも上るタイトルもある一方で、1企業が1代表作をリリースしているような状況が顕在化しており、米国のスタートアップもヒット作をリリースしています。

ビッグタイトルの大半は複数のプラットフォームに対応

ほとんどのビッグタイトルは、パソコン・家庭用ゲーム機器用、モバイルアプリといったように複数のプラットフォームに対応するよう設計されています。また、収益計上の方策としてFree-to-Play(F2P、フリー・トゥ・プレイ)という形式を採用。基本プレイは無料で提供しながら、ゲーム内アイテムや装備などに課金させるなど、コミュニティに対して長期的に新しいコンテンツを提供する方式で収益を上げています。

海外のM&A事例としては2022年に、米マイクロソフトが米ゲーム大手のActivision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)を687億㌦で買収、ゲーム業界最大規模の買収となり注目を集めました。

IPコンテンツの強化に向けた協業の動きも活発化

近年は自動車メーカーやショッピングモールの運営会社など、異業種からゲーム市場へ参入する動きも相次いでいます。東京に拠点を置く大手テレビ局は、オリジナルIP(知的財産)の開発・拡張戦略の一環として取り組み、人気バラエティ番組や、番組内コーナーのゲーム化企画などを進めます。海外の大手自動車メーカーは、日本のオーナー会員向けサービスとして展開しているスマートフォンアプリにゲーム機能を搭載、ゲームを通じブランド体験を広げていきます。大手家具メーカーはプロのeスポーツチームとスポンサー契約を締結し、特別デザインの家庭用ゲーム向け家具を開発、販売しています。

また、スタートアップと大企業の間では、IPコンテンツの強化に向けた協業の動きも活発化しています。

ゲーム業界のベンチャーマップは大きくゲームソフトの開発、現実とデジタル空間をつなぐXR(クロスリアリティー)、eスポーツ、クリエイターエコノミー、オフライン施設の運営という領域に分かれており、今回はこの中から5社を紹介します。

ゲームメタバースの専門クリエイタープロダクションを運営(株式会社メタバースクリエイターズ

メタバースクリエイターズ(東京都渋谷区)は、ゲームメタバースの専門クリエイタープロダクションを運営しています。提唱しているのはユーザーがコンテンツを作るプラットフォーム。メタバースを独自開発すると開発コストが数億円に上るのに対し、開発コストが数十万円で済み、期間も大幅に短縮できる点が特徴です。このプラットフォームを成功させるにはクリエイターが必要で、同社には、ユーザーが多く訪れるワールド、人気のアイテム、アバターを作れる多くのトップクリエイターが所属。100人規模まで拡大する計画です。

著名な漫画やゲームをIP化し、VRを掛け合わせてゲームを作る(株式会社UNIVRS

UNIVRS(ユニバース、東京都中央区)は日本で有名な漫画やゲームをIP化し、仮想現実(VR)を掛け合わせてゲームを作るという事業を展開しています。開発中のゲームでは、空間内でプレーヤーが縦横無尽に飛ぶことができますが、この移動技術を支えるのは同社独自のVR酔いを防止する技術です。企画・開発・配信まで一気通貫で行っていますが、今後はゲームを作るだけでなく開発基盤、シリーズ化、デジタルコマース、ファンコミュニティに至るまでを構築していく考えです。

AIの著作権問題などのリスクを回避したクリエイターとタイアップ(株式会社NOKID

NOKID(ノーキッド、東京都中央区)は次世代クリエイターとのタイアップで高コストパフォーマンスを実現するコミュニティを提供しています。完全招待制のクローズド型で、AIの著作権問題などのリスクを回避したクリエイターとのタイアップを実現しています。また、独自の管理システムを活用して金額、スケジュール、クリエイティブイメージをデータベース化することでマッチングの精度を向上。今後は、企業や施設、自治体と長期的な連携を強化します。

国内最大級のeスポーツ大会のプラットフォーム(ゲームテクター株式会社

ゲームテクター(東京都品川区)は、ゲーム大会の主催者と選手を繋ぐ国内最大級のeスポーツ大会のプラットフォームを提供しています。主催者が簡単にゲーム大会を開催・運営し稼ぐことができる点が特徴で、現在まで約4万のコミュニティ大会を実施。Z世代を中心に10万人のユーザーを抱えています。参加選手とオーディエンスからの支払いにより主催者が儲かるイメージで、すでに、1回のゲーム大会を主催することで20万円以上の収益を獲得した個人Vtuberが存在しています。

ゲームのコーチングサービスを運営(株式会社Game&Co.

Game&Co.(ゲームアンドコー、東京都港区)は、ゲームのコーチングサービスを運営しています。eスポーツ市場は年間20%の成長率が見込まれ、ファン数も毎年約200万人を超えるペースで増加していますが、eスポーツの教育業界では指導メソッドがまだまだ確立されていません。このため、専属コーチによる伴走型コーチングサービスを提供しています。今後は人材紹介・サブスク・企業向けサービスなどさまざまな領域で展開していく予定で、eスポーツ×英会話・プログラミングなど、他分野との連携による市場の加速を図っていきます。

 

ゲーム情報誌を発行する出版社によると、2023年の国内家庭用ゲーム市場規模は前年を約8%上回りました。ゲームソフトの減速を好調なハードの売り上げが補った形で、ハード市場は過去10年で最大規模となりました。2024年は人気家庭ゲームが発売30年の節目を迎えるなど、改めてハードに注目が集まるのは必至。家庭用ゲームが市場のけん引役の一部を担い、引き続き市場は堅調に推移するとみられます。

 

▼テーマリーダーProfile

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

イノベーションソリューション事業部

田中 美咲 (たなか・みさき)

デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーにて、M&A実行支援業に従事。商社、重工業、電力会社向けに、バイサイド、セルサイド共にFA業務を提供。デロイトトーマツベンチャーサポート参画後、スタートアップ支援団体運営に従事し、主にASACやNEXs、TUSの事務局を担当。その他、大企業向けにコンテンツ系新規事業開発案件に従事。

 

 

 

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