モーニングピッチ

イノベーショントレンド

 

\イノベーショントレンド解説/

この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。今回は、5月22日に開催したFintech(フィンテック)特集です。

東南アジアのスタートアップ全体の資金調達額のうち約半分はフィンテック

フィンテックはFinance(ファイナンス)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた造語です。決済や送金、融資などの業務に、スマートフォンやSNS、インターネットといったIT関連のさまざまなテクノロジーを組み合わせた金融サービスのことを指します。一般顧客向けのサービスも進化を遂げており、金融を身近にとらえられるようになりました。

日本も調達額や社数が増え続けていますが、必ずしもスタートアップだけの話ではなく、既存の銀行や事業会社の参入も活発です。一方、海外ではスタートアップによる資金調達が拡大しています。特に顕著なのが東南アジアやインドで、2023、24年のスタートアップ全体の資金調達額のうち約半分はフィンテック領域でした。世界市場の規模も年々拡大しています。2030年には1兆5000億ドルと2021年に比べ6倍の規模へ拡大すると予測する調査もあり、まだまだ伸びていく領域だと言えるでしょう。

金融領域には融資、為替、預金という銀行の三大業務のほかにさまざまなサービスがあり、その領域ごとにフィンテックサービスが活躍しています。例えば売掛金を現金化するファクタリングの領域だと、イノベーションによってオンラインで対応できるサービスが誕生しました。為替であればモバイルやオンラインによる決済、個人間で直接やり取りするP2P(ピア・ツー・ピア)送金、投資ではロボアドバイザーやオンライン証券、株式投資型クラウドファンディングなどです。

業界同士の垣根が低くなり他業界のサービスを提供する動きも活発化

日本のフィンテックは世界と比べても特殊で、古くは銀行や保険、証券、決済会社が大きなホストコンピューターを活用してシステム設計を行う時代がありました。2014、15年辺りからはアンバウンドリング(分解)という流れの中で、フィンテックベンチャーが、金融機関がサービス提供していたものを細分化して、より一点突破型で金融サービスをユーザーに届ける流れが顕在化しました。

2017年ごろからは、色々な事業会社や金融機関とフィンテックベンチャーが連携して新しい業態を作っていくリバンドリングという流れが表面化しています。直近の潮流はエンデベッド・ファイナンス(埋め込み型金融)で、決済や保険などさまざまな金融サービスを意識することなく利用する流れが加速しています。最近のトレンドはシームレスです。銀行業が証券業に参入したり、証券業やEコマース業者が保険サービスを提供するといったように、業界同士の垣根がかなり低くなってきています。

新NISAへの累計投資額は政府目標を前倒しする形で推移

現在の国内フィンテック市場をめぐっては、4つのトピックがあります。一つは日本国内の投資環境の盛り上がりです。新NISA(少額投資非課税制度)への累計投資額は政府目標を前倒しする形で推移しており、企業型DCや個人型確定拠出年金(iDeCo)の普及も進んでいます。二つ目が日本企業の海外進出だけではなく、外国企業による日本展開も活発化している点です。三点目が暗号資産の税制改正の可能性で、自民党Web3ワーキンググループが申告分離課税適用などの税制改正案を発表しています。インドに比べても、日本の暗号資産の個人向け税率はかなり高い水準にありますが、その部分が改正されるのではないかというところまで進みつつあります。それに向けて暗号資産業者の動きは活発化しています。四点目が金融DXの進展に伴う高齢者、若年層へのリーチです。

国内には現在、決済や融資、クラウドファンディング、暗号資産など多岐にわたる領域の中に200社以上のフィンテックベンチャーが存在しており、金融機関や大企業との協業も加速しています。今回は5社のフィンテックベンチャーを紹介します。

個人が1円から上場企業などへ手軽に貸付投資

ファンズ株式会社

ファンズ(東京都渋谷区)は、個人が1円から上場企業などへ手軽に貸付投資できる固定利回り型プラットフォーム「Funds」を運営しています。無担保で無保証、使途の制約のない成長資金を少額から提供することが可能で、AIを活用した効率的な審査体制によって、最短だと数週間以内で調達できる点を強みとしています。個人には値動きを気にせず始めやすい資産形成の機会を、企業には機動的で柔軟な資金調達手段を提供することで、人々の暮らしに根ざしたこれまでにない形の国民的な資産運用サービスを目指します。

次世代決済プラットフォームで外国企業の日本進出を支援

BillPay株式会社

BillPay(ビルペイ、東京都中央区)が提供する次世代決済プラットフォーム「BillPay」は、外国企業が日本進出をスムーズに行えるよう支援するサービスです。法人を設立せずに利用できるバーチャル銀行口座や、低コストでの送金サービスで構成され、自動化された請求・決済処理、多言語対応のダッシュボードも完備しています。また、APIやノーコード版の活用によって、相手先のブランドで提供するホワイトラベルにも対応可能です。これにより外国企業は日本市場に簡単に参入でき、最終的に決済総額で月間10億円を目指します。

中小企業の従業員やエッセンシャルワーカーも安心して資産形成

株式会社ベター・プレイス

ベター・プレイス(東京都新宿区)は、中小企業の従業員やエッセンシャルワーカーが安心して資産形成できるお金の福利厚生「はぐくみ企業年金」の導入を進めています。企業側の事務手続きと従業員側の掛金手続きが簡単に行える企業年金DXシステム「はぐONE」を開発・提供し、従業員の将来への備えと安心感、企業の人材定着に寄与することを目指しています。すでに7万5000人以上が利用しており、企業年金という特性上、加入者の解約率が0.89%(2024年9月末時点)と低いことも特徴です。

衛星測位情報を活用した暗号資産によるセキュリティプラットフォーム

Vlightup株式会社

Vlightup(ブライトアップ、東京都千代田区)が提供する「TRUSTAUTHY」は、衛星測位情報を活用した暗号資産によるセキュリティプラットフォームです。具体的には位置情報認証により特定地域以外からの資産操作を物理的に制限し、秘密鍵を複数端末に分散管理、さらにAIベースで異常取引をリアルタイムに検知する仕組みを取り入れています。日本でもハッキング事件や内部不正による大規模な資産流出事件が多発しており、多層的に防止することで、安全なデジタル資産管理を実現します。

多言語対応のQRモバイルオーダーシステムを展開

CAPICHI PTE. LTD.

CAPICHI(キャピチー、ベトナム)はベトナム、日本、タイでモバイルオーダー事業を展開しています。特にベトナムでは、フードデリバリーや飲食店のテーブル予約サービスを提供しており、数多くの日本飲食店のサービスに携わっています。日本人・フランス人・ベトナム人のデザイナーが協力して作った多言語対応のQRモバイルオーダーシステムは日本国内にないUXがあり、多国籍の外国人に使いやすい点が特徴です。まずベトナムに特化した営業活動でユーザーを増やし、ベトナムモデルを近隣諸国に広げていきます。

国内では金融機関を中心とした大手企業によるフィンテックスタートアップ企業の買収が相次いでいます。金融領域で単独での事業拡大は資本や信用力の面で難しさがあるだけに、大手の傘下で一段の成長を目指す動きが加速するとみられます。

▼テーマリーダーProfile

デロイトトーマツ ベンチャーサポート株式会社
グローバル事業部

 

大平 貴久

 

➢2024年よりインドのベンガルールへ駐在中
➢グローバル事業部事業部長を務める
➢東南アジア、インドのStartupエコシステムに精通
➢Fintechスタートアップ支援をおこなう

 

~イノベーショントレンドを定期的にキャッチアップされたい方へ~

—————————————————————————————————————————————-

Morning Pitchでは、上記のような各回テーマ概観の解説を

資料や動画にして有料会員様限定でお届けしています

 解説資料・・・Morning Pitch有料会員

 解説動画・・・Morning Pitch Innovation Community(MPIC)会員

—————————————————————————————————————————————-