モーニングピッチ

INSIGHTS

2017.06.22

 

Morning Pitchはベンチャー企業と大企業の事業提携を創造することを目的として運営しており、おかげ様で数多くの提携事例がMorning Pitchから生まれています。

さて、Morning Pitchでは不定期にMorning Pitch Schoolというイベントを開催しています。これは事業提携を生んだベンチャー企業(と大企業)をお招きし、その裏側をお話いただくというイベントとなっております。今回は株式会社ナウキャストの代表取締役CEOである林様をお迎えして、事業提携の裏側をお話いただきました。本稿ではそのレポートをお届けします。モデレータはトーマツベンチャーサポート株式会社 FinTechリーダーの大平貴久です。

株式会社ナウキャスト
代表取締役CEO
林 良太

ドイツ銀行ロンドン投資銀行本部に日本人として初の現地採用。ヘッジファンドを経て、2014年Finatext創業。2016年8月、M&Aを経てナウキャストのCEOに就任。

 

トーマツベンチャーサポート株式会社
 FinTechリーダー
大平 貴久

独立系ITコンサルティングファームにて、金融サービス企業(クレジットカード、証券、消費者金融)等に対するコンサルティングに携わる。その後、国内雑誌出版社の事業開発部へ出向。Webプロデューサーとして、6の新規事業を立ち上げる。 2015年トーマツベンチャーサポート株式会社に参画。
IT技術&金融業界への知見と新規事業創出経験、メディア運営経験を活かし、ベンチャー企業支援と大企業向け新規事業開発コンサルティングを提供。 特に FinTech に関しては、国内100 社以上のベンチャー企業とコンタクトを持ち、2015年6月から各金融機関の頭取向けに講習会プレゼンテーションも多数実施。


ビッグデータから早くて高精度な指数を算出する

大平:林さん、本日はよろしくお願い致します。ナウキャスト様には2016年の3月にMorning Pitchに登壇いただき、そこから事業提携が生まれたと聞いています。まずは会社の説明を簡単にお願いできますか。

:よろしくお願い致します。株式会社ナウキャスト代表取締役CEOの林です。

弊社は東大発のFinTechベンチャーで、いわゆるビッグデータを扱っている会社です。わかりやすいところですと、物価や売上予測などの経済データを分析し、その情報をカード会社や、ヘッジファンド、投資銀行等の金融機関に提供しています。その他画像やテキストデータも分析しています。

大平:代表的なサービスはどのようなものですか?

:弊社では例えば、日経 CPINowというリアルタイム物価指数を提供しています。そもそも、消費者物価指数は総務省が公表していますが、作成に1ヶ月以上かかったり、全品調査でなくサンプル調査であったりするのです。これをもとに正しい意思決定ができるかというとなかなか難しいのではないかと思います。我々はこの状態を「バックミラーを見ながら運転する」と表現しています。

我々の提供する日経 CPINowは、ある日の物価を2日後に公表でき、しかもサンプル調査ではなく全数調査なのでデータが正確です。つまり、高精度で迅速な物価指数が公表できるのです。日経CPINowはマイナス金利導入直後の黒田総裁の講演や、 政策決定会合の議事要旨、記者会見等でも引用された実績がある等、 政策当局の判断にも実際に活用されています。

 

クレジットカード情報から「本当の」消費統計を算定する

大平:ありがとうございます。ビッグデータを使って早くて高精度な指数を提供しているのですね。それでは話題を変えまして、事業提携の内容について教えていただけますか?

:ナウキャストはJCB様と提携し、「JCB消費NOW」というサービスを2017年03月にリリースしました。

参考:JCBとナウキャスト、ビッグデータを活用した新指標「JCB消費NOW」の提供を開始

 

JCB消費NOWは、JCBのクレジットカード会員の属性や決済情報などのビッグデータを活用した消費統計です。

JCB様は国内唯一の国際カードブランドでして、そもそもデータを大量にお持ちでした。社内での活用はしていたものの、外部向けにも使えないかと検討していたそうです。そんなときにちょうど弊社がお話する機会をいただきまして、ディスカッションを重ねた上、JCB消費NOWをやろう、と決めていただきました。

JCB消費NOWでは、情報提供に同意いただいたJCB会員の属性や決済情報を個人が特定できないよう統計化し、消費指数として公開するというものです。公開する消費指数は6種類で「総合」「外食」「ドラックストア・医薬品」「ファミリーレストラン」「ガソリン」「EC消費」となっています。

 

 

大企業側のスピードも早かった

大平:では事業提携の裏側に話を移していきたいと思います。一般論ではありますが、大企業がベンチャー企業と組むときに「なぜこの会社ではなくてはならないのか」を説明するのが大変だ、ということをよく聞きます。ナウキャストはどのように説明されましたか?

:物価指数に対するノウハウがあったことが強みでした。我々は先程紹介した日経 CPINowなどの知見があり、物価指数のようなものを計算するためのノウハウが既にたくさんたまっていました。実際に指数を計算するときもチューニングが大変で、今までのノウハウが活きました。

大平:これもまた一般論ですが、ベンチャー企業に比べて大企業は動きが遅く、提携をするのも一苦労、という話をききます。今回はいかがでしたか?

:全然そんなことなかったですよ、めちゃくちゃ早かったです!まずは現場の方とやろう!という話になりまして、現場で案件を握って「全部通すから」と会社に話を通していただきました。現場から上司の方や関係部署の方にJCB消費NOWがいかにいいビジネスかというのを本当に一生懸命に説明いただきました。遅いどころかむしろ上からはもっと早く案件化しろとせっつかれたくらいだと伺っています。

 

大企業としてルールがあるのはあたりまえ。その上でお互いを信用していく

:最近ベンチャー企業が取り沙汰されている面もありますが、謙遜しているわけではなく、会社の規模や歴史として大企業が上でベンチャーが下だと思うんですよ。なのでベンチャーからすると大企業と提携するのが難しいのは当たり前なんですよね。とはいえ、下とはいっても対等であることは重要です。お互い目指すべきサービスの形は同じなので旗を立てるといいますか、何かあったときにぶれないためには立ち戻るべきところがあるというのは非常に重要なことです。そういう意味ではJCB様には本当にフェアに接していただきました。

実際にやりとりさせていただいていると、「こんな細かいところまで気づくんだ!」という発見も多く、それについていって我々も成長させていただきました。それについていって最終的には信用していただけたのかなと思います。

 

ローンチしてからもどんどんカイゼンを

大平:それでは最後に、今後の展開を教えてください。

:最近、最初のレポートが出来上がりまして公開しました。自分でいうのもなんですが、できあがったものをみて、改めていいサービスだと思いました。とはいえ、関係者の皆さんがこの姿を当初からイメージできていたわけではありません。できあがったものをみて、こうしよう、ああしようという意見が出てきています。ここにどんどんトライしていきたいです。

あとは、金融以外の分野にもナウキャストのサービスははまるところがあると思っていますので、こちらにも取り組んでいきたいです。

まだ我々の会社はやりたいことに対して1合目です。これからも新しいチャレンジにどんどん取り組んでいきたいです。

大平:林さん、本日はありがとうございました!

:ありがとうございました!

 

以上、ナウキャストのお話はいかがでしたでしょうか?

一般に、大企業は「動きが遅い」「いつまでたっても承認がおりない」「現場に権限がない」などと言われます。他方で、今回お話を伺っていて思ったのは、そこを乗り越える大企業こそがベンチャー企業と提携できる、ということです。

ベンチャー企業が大企業にあわせることもある反面、大企業側もベンチャーに歩み寄れれば、ベンチャー企業と大企業の事業提携はうまくいく可能性が高まるはずです。また歩み寄りのためには、担当者や現場に熱意や裁量があることも必要条件なのだとあらためて認識させられたインタビューでした。

(文責:Morning Pitch総合プロデューサー 納富 隼平)